初め言葉
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交渉成立、というわけでもないが(まず船長が私の言い分を分かってくれないだろう)とりあえず彼らの船に乗ることが決定した。
まぁ、こいつらとの航海が――こいつらの存在が私の過大評価のし過ぎで、私の理に叶っていなく、私がつまらないと判断したら降りれば良い話だ。
私は自分の夢が叶えばそれでいい。
「おいっ!!!!!」
突然、大冠を被るずぶぬれのおかしな男に声をかけられた。
…なんだこの男は。
サンジが肩に手を置いている女性のペアだと思われるが、そのおかしな格好に思わず噴出してしまいそうになる。
鳴らす喉ないんですけどね。
「頼みがある」
口調のわりには下手に出てきた男が、私の足元に跪き、その『頼み事』の内容を話す。
どうやら、『記録指針』と船を無くしたらしく、彼らはただちに『ウイスキーピーク』に帰らなくてはいけないらしい――ようするに『船に乗せてほしい』という類のものだ。
――その『記録指針』ってこれじゃないのかなぁ……。
「それは少しムシが良すぎるんじゃないの?Mr.9、クジラ殺そうとしといてさ」
ラブーンを殺そうとしたのはいただけない。
『記録指針』を返してやる義理はないみたいだし、こいつらの正体はなんとなく分かった――分かったゆえの、めんどくささがにじみ出てきた。
「お前ら一体何者なんだ?」
「王様です」
嘘つけ。
ナミが頬っぺたをつねれば、Mr.9の目に涙が浮かんだ。
「いえません!!!しかし!!!町へは帰りたいんです!!!受けた恩は必ず返します!!」
私達の前で土下座までしてのけた二人組の女の方が、涙を流し訴える。
どうやら、私の勘は当ったらしい。
こいつらは間違いなく私が頭で思い浮かべた奴らで、こいつらは間違いなくめんどうくさい奴らだ。
だが、決定権は船長にある。
あいつらの『素性』という情報をタダで譲ってやる義理もない。
「いいぞ、乗っても」
お許しが出たようでよかったじゃないか。
『受けた恩は必ず返す』というのは嘘っぽいがそこはスルーしてやろう。
<君達、バロックワークスだな?>
「え、なんでそれを…!!」
<君達の会社は“謎”がモットー。情報を売られたくなければ大人しくしていることだな>
「……」
<裏切り者扱いはされたくないだろう?>
怪しく微笑んでおけば、二人組は直立不動で冷や汗を流し、無言で何回か首を縦に振る。
これからお世話になる海賊船だ、変な気を起こされてめんどう事に巻き込まれては困る。
一応、釘を刺しておいた。
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