ろんぐ
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ハトミック島に上陸したハートの海賊団。
少数の船番を残し島の地面に足を乗せたクルー達は、久しぶりの島にはしゃぎながらそれぞれ目当ての店へと駆けた。
船の前に残されたロー、ベポ、シャチ、ペンギンはお互いの顔を見合わせた。
「……おれは船に残ってたい」
「どこ行きます?」
「キャプテンはどこ行きたい?」
行き先を尋ねるペンギンとベポの眼差しを受けたローはシャチに視線を合わせ、にやりと笑みを浮かべた。
「死神屋を捜す」
短く呟かれた言葉にシャチは大きく体を震わせた。
拒否反応のように流れる滝のような汗。
ペンギンはそんなシャチに哀れの目を向けて歩き出したローの後ろについていくように足を動かした。
「えぇ〜」
だんだんと小さくなっていく三人の背を見つめながら声をあげたシャチは俯いた後、なにかを決心したかのように三人の背に向かい走り出した。
「あんな目立つ格好でいたらすぐに分かるだろ」
優雅に道を歩くローは通り過ぎる人を目で追っていた。
「死神は黒いコートのフードを深く被っています。靴は同じく黒です。性別、年齢などは知られておらず、そもそも人間かどうかも不明。大鎌を自由自在に出せるらしく、血を一滴も流さす、流させずにターゲットを殺すんです。姿を見たものはすぐに殺されるらしいので手配書の写真はレア物扱い。しかも写真を撮った海兵の話しだとお化けみたいにスーッと消えたらしいんですよ。活動時間は夜中なので昼間の今見つけるのは難しいと思いますよ」
一人ベラベラと喋りだすシャチを三人は立ち止まり凝視した。
三人と視線が合ったシャチは戸惑いながら更に口を開いた。
「なっ…なんすか…」
「シャチ…お前…」
「ヤケに詳しいな」
「シャチって好奇心旺盛だから嫌いなものでも調べあげちゃうんだよね」
なるほどと納得をするペンギンとロー。
すごい知識だと無邪気な笑顔を送るベポ。
「だっ、だって姿見ちゃったら怖いじゃないですか!」
「やっぱり怖ぇんじゃねぇか」
ローのツッコミにシャチは両手を広げ大きくリアクションをとった。
トンっと軽い音が響き、シャチの体は動きを止めた。
否、強制的に止められた。
「あ、わりっ」
「…いえ、大丈夫です」
落ち着いたソプラノが響き渡った。
視線を合わせたシャチは目を丸くして固まった。
目の前にいたのは美人な女性だった。
白い肌に同じく白い長い髪。
紫の瞳は宝石の様に己の存在を主張していた。
左頬には花形の刺青のような模様があり、どこか不思議な雰囲気を纏っていた。
ふわふわとしたデザインのワンピースを揺らし、無表情に頭を下げた少女はその場から去っていった。
「超美人…」
「クマにいたらすごく可愛いんだろうな〜」
きゃぴきゃぴとメスグマについて話しだすベポ。
ローは興味ないとばかりにシャチに「気をつけろ」と注意をすると先に進んだ。
「あ、船長!待ってくださいよ」
ローについていこうとしたシャチはペンギンのほうに視線を向ける。
すると、固まったまま動かないペンギンが目に入った。
「ペンギン…?」
「っ、なんだ?」
急に声をかけられ、驚きで体を震わせたペンギンを見てシャチは顔面ににやにやと効果音がつきそうな笑顔を貼り付けた。
「もしかして…あの子に一目惚れしちった?」
「そんなわけないだろ」
「あのペンギンが恋なんて信じらんねー!」
「違うと言ってるだろうが!」
ニヤケ面のシャチの顔面に開いた左手を張ったペンギンはそのままローの背を追いかけた。
「ちぇっ、冗談なのによー」
女っ気のないいままでのペンギンが先ほどの女性と素敵な恋愛をする姿を思い浮かべたシャチは苦笑いを浮かべて走り出した。
――…美男美女でお似合いかもな
三人に追いついたシャチはまだメスグマについて語るベポの頭に後ろから軽くチョップを入れた。
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