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しかし開けてびっくりなんとやら。
そこの光景を目にした直後に全員が言葉を失う。
「な、ど、どういう状況だよこれ...?」
村人達はみな一様に正座をして、白い服を着込んでいた。
手はお祈りをするかのごとくしっかりと組んで離れることはない。
頭は下に項垂れており固く閉ざされた瞳は何を思っているのだろう。
しん、と静まり返った静寂のなか、
その中央に佇む男がようやくその重たい頭を持ち上げた。
キラリと光るターコイズブルーの瞳に、なぜかグレイはじんわりと手に汗を握る。
まるで人形のように、全てが整いすぎた男だった。
「みなのもの、顔をあげよ。
今日の儀式はこれにて終了だ。
各々、家に帰宅するといい。」
ひらりと空を切った男の手の号令を合図に、すくりと住民がひとり、またひとりとその姿を消していく。
最後の住民が席を外しいなくなったと同時、ようやく彼の瞳は自分達を写し出した。
「長らくお待たせして申し訳ありません。
ここまでの長旅ご苦労様です。
フェアリーテイルの方々、ですよね。」
丁重に頭を下げる姿に思わずみとれてしまう。
それくらいにこの男の容姿はよくできていた。
「はい。今回は依頼でこの村にやってきたのですが_」
「もちろん。
その依頼書を出したのはわたしです。」
「じゃあ、あなたが依頼書のアンジュさんですか。」
「おっしゃる通りで。」
とんとん拍子で進められていく会話にほっと胸を撫で下ろす。
どうやらじきに話は終わりそうだ。
依頼人と言葉を交わしていたエルザを遠巻きに見つめながら、グレイはすることもなく、ぐるりと辺りを観察してみることにした。
床に敷き詰められた大量の座布団。
これはさっきまで住民全員が正座をしていたものだ。
そして今日は雨なので気がつくのが遅れたが、赤、青、黄、透明などの様々な色で作られたステンドグラスの窓。
きっと中も白いこの塔は、光があたった時、綺麗に虹色に輝くのだろう。
そして住民が願うように祈りを捧げていた、下げた頭の先。
それを見て、グレイはここがどういうところなのかと、ようやく合点がいった。
「依頼書のお話はまた後日いたします。
今日はゆっくり宿でおやすみください。」
ぐるぐると回っていた思考回路はアンジュのよく通る声により強制シャットダウンをする。
宿の鍵です、と手渡されたものを受けとるや否や、一刻も早く服を着替えたくて堪らなかった最強チームの面々は社交辞令もほどほどにその場を後にした。