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□秋のワクワク文化祭
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ー8:00ー

◆1-Aにて◆





ざわざわと騒ぐクラスメイト。

そのなかでグレイは1人、退屈そうに頬杖をついていた。

黒板にはでかでかとチョークで描かれた



文化祭。


の文字。


そのカラフルに彩られた字をみて、
グレイはさらにその表情を苦いものに変える。




文化などくそ食らえなグレイにとって、それは退屈の何者でもなかった。

しかし。


「今日は女子寮の女子どもが来るぞー!!!
皆っ!!

準備はいいかぁーっ!!!」

「「「「「ぉおおおぉっ!!!」」」」」

そのクラスメイトの団結力といったらまさに...




あほ。



まじで。



あほ。







グレイはそれらの盛上がるクラスメイトを横目で流すと、
窓の外を見つめる。

外には屋台を準備している三年生の姿が忙しく駆け回っていた。


そのなかに見知った顔を見つけ、
グレイはあっと声をあげる。


「おいっ!!ギルダーツ!!」


それは体育祭から何かと自分に世話をかけてきた先公で。

最初に体育祭で使用した紙での嫌がらせを受けたときは死ぬほど恥ずかしい思いをして、最低なやつと思ってたけど...


何事かと上の階を見上げてくるギルダーツの視線に入らないよう、
グレイはわざと乗り出していた上半身を急いで教室に戻した。




今頃首かしげてんだろな。



くすくすとその間抜けな姿を想像しながら、グレイは笑いを溢す。



ちなみにギルダーツは
教師のなかでグレイがもっともなついていて、それでいて数少ない頼り概のある親のような存在なのだ。

なので、ギルダーツに対しては子供のように構ってほしい行動を自然にしてしまう。

それに本人は気がついていないが。







このまま隠れてしまおうか。




せめてギルダーツの間抜け面を拝もうと、
グレイは少しだけ窓から顔を出し、彼のいた場所をみてみる。


そして驚いた。



え、ギルダーツ、こっちみてんのか?



ギルダーツは
先程いた場所を一歩も動かずに、
ひたすらこちらを見つめている。

そして、その唖然としたグレイを視界で確認するとニヤリと笑った。


「やっぱりグレイか。」


やっぱりって...

グレイは驚きを隠しきれない。

それと同時に、彼を焦らせようとした自分を少し恥ずかしく思った。

結局お見通しって訳かよ...つまんね。

「よくわかったな。」

「ははっ、声でわかるだろ。



そんな不機嫌な顔するなって。」


イタズラが失敗した子供のような顔をするグレイにギルダーツは慰めの声をかける。

グレイは子供扱いされていることにため息をつきながら、
右手でしっしと相手に戻れと促した。


「ギルダーツ、自分のクラスの準備手伝ってンだろ?
早く行けよ。」

「どっちが止めたんだか。」

うるさいっ

そう焦っていうグレイにギルダーツはひらりと手を降りながら去ろうと足を進める。

しかし、何かに気がついたように再びこちらを振り返ると、

「あと、ギルダーツ 先生!!だかんな。」

と、グレイに念を押した。

最後までバカにされているような気がして、グレイはふくれる。

そのようすを見て、ギルダーツは再び乾いた笑い声をあげた。

「文化祭、がんばれよ。

アホグレイ!!」


誰がアホだ!!


そう身を乗り出して叫んだが、
なにも聞こえなかったかのように去る余裕のあるギルダーツを見て、
グレイはしぶしぶとその身体を机に突っ伏させる。

くっそー、ふざけやがって..

しかし、頑張れと言われたからにはきちんとしなければ。

グレイは心のなかで自分にエールを送ると、
重たい頭をあげ、教室を見渡した。
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