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□君思う灼熱の赤い炎。
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「顔。ぶすくれてるわよ。」
「んなことねぇ。」
「眉間にシワよってる。」
「気のせいだ。」
「その貧乏揺すりはなによ。」
「足にしもやけができて痒いだっつの。」

「っ.......!!!!もう.....っ!!!!!!!



いい加減にしなさいよねっナツ!!!!!」

ルーシィは怒りながら髪を振り乱して叫ぶと、桜色が項垂れるロングテーブルへと手のひらを強く叩きつけた。
バンッと大きな音が響き渡り、ギルドにいる仲間たちが一斉にそちらの方を振り返る。が、ルーシィはお構いなしにその少年へと怒声を浴びせ続けた。
「第一ね、あんたいっつもいっつも執着心が半端ないのよ!!!!」
「あ!!?お前に何がわかるってんだよ!!!!?」
「ええわかるわよ!!バカなあんたよりも、何よりね!!!!」
威張りながら腕を組めば、それに負けじとばかりにナツは大声をあげて突っ掛かってくる。
しかし、それに負ける彼女ではない。
バチバチと火花が散るにらみ合いが続く中、

バンッとギルドの扉の開く音が
盛大に大広間に響き渡った。

わぁぁああっと興奮したような声やら、奇声やらが一気にそこから溢れ出したと思えばその入り口か大量の人の群れが雪崩れ込んでくる。
ルーシィは先程の鬼のような表情とはうってかわって微笑んでその人物達を受け入れるように出迎えたが、ナツはというと眉間に寄せていたシワの数を増やし、苛立たしげに肘をつき始めた。
その人物達とはほかでもない、

大量の元気溢れる子供たちである。



「おいおめーらぁあっ
静かにしろぉおおおおっ!!!!!!!!」

ナツの機嫌は走り回る子供のせいでさらに急降下すると、とうとう我慢の限界が訪れたのか、その小さな大群たちを怒鳴り散らしはじめる。その怒り狂う頭をルーシィは容赦なしにパカンとはたいた。

「だから子供相手に怒んなっつってんでしょ!!!?怖がってるじゃない!!!!?」
彼女が指差す先にはガタガタと震える女子供が二人、床に座り込んでこちらを見ている姿があった。
ごめんねーと近寄っていくルーシィの背中を睨み付けると、ナツはふんとそっぽを向いて鼻をならす。

__お前ら全員、子供だからって特別扱いかよ!!!
ふざっけんな!!!

ナツは次々溢れていく行き場のない怒りを吐き出すかのようにドカリと荒々しく椅子に腰かけると、不満げに熱い息を吐いた。

なぜ子供がギルドにいるのかと不思議に思うものがほとんどだと思うが、どうやら依頼書自体は二日前から出ていたらしい。
賑やかになるし、報酬は貰えるしで、利益しかないと踏んだマカロフがその孤児院からの頼みを受けたのだった。

それを聞いたのが昨日の夜の出来事。

そして子供たちを楽しませてやってほしいと世話約を頼まれたのも突然のことだった。
今日こうして強制的に集合をくらわされ、ギルドにきたものは
全部で五名。
子供好きのエルザ、人思いで広い心の持ち主のルーシィ、誰にでも分け隔てなく優しいレヴィ、遊び相手になってやれるナツ。そしてもう一人。


「ぐれぇええええいっ!!!!!!!」

きゃっきゃとはしゃぐ子供達の声にナツはうんざりと肩を下げた。

そう、普通に子供の世話だったら彼の沸点もここまで上がってはいなかったはずなのだ。

しかし、愛しの人と関係することとなれば話は全くの別物になってくる。


_またかよ....ほんとガキってやつは人の恋人に....!!!!

たたたと走ってかけていったその男の子の行き先を目でおっていけば、
必然であるかのごとく、黒髪の少年の胸へと抱き上げられた。
そんなごく当たり前のように行われた動作にナツの心はまたひとつ、ずくりと音をあげる。


「何だよー、ハル。お前はさっきだっこしてやったばっかだろ?」
「へへへーっ俺はグレイがいんだ!!!グレイが好きなんだーっ!!!」
「へーそうなのか?
俺もそう言ってくれるハルが好きだぜ?」
「マジ!!?俺らりょーおもいーっ!!!!」

互いの頬と頬をくっつけてぐりぐりと頭を左右に振るグレイを可愛いなとか、普段であれば絶対言うことのないだっこと紡ぐその小さな口を自分のそれで塞いでやりたいなんてことは断じて思ってはいない。決して。

思ってはいないのだが___

「おめーずりぃぞーハル!!!
俺がだっこされるばんだったのに!!!」
「いやよ!!!次は私よ!!?」
「ちがうよ!!!僕だよ!!」

我先にと集う子供たちに、ナツは怒りの炎を燃やさせた。

_ふざけんな!!!!だっことかくそ食らえ!!!
逆に俺は毎晩グレイを抱いてやって、お前らの知らないあいつの顔とか声とか知ってるっつの
このぶぁーか!!

子供に聞かせてやれるギリギリの言葉でナツは内心暴言を吐くと、母性本能溢れるグレイの姿をみやった。
それにしても見事に誰が見ようとも完璧なお母さんぶりである。
そんな珍しい姿を見れるのも悪くないが、つまらないものはつまらない。

_さて、どうしてやろうか。

ナツが悪巧みを考え始めた刹那、
先程のグレイに抱かれた子供が大きな声で口を開いた。
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