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□想い石、想い人。B
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お腹もすいてくる真昼時。
思った以上に早く終わることのできたクエストの報酬を片手に握りしめながらナツはギルドを目指していた。
隣を歩いて_いや、浮いている相棒もこれからくるランチタイムに浮き足立っているのか、いつもよりか飛ぶペースが速い。
それにつられるようにしてナツも歩幅を大きくする。
「ハッピー!!!
どっちが早くつくか競争しようぜ!!!」
「あいさーっ!!!負けないよーっ」

一人と一匹が助走をつけ、気合いを入れ直した
その時であった。

不思議な雑貨店が彼の視界に、ふと写り混んだ。

なぜか自然に目を引くお伽噺に出てきそうなモチーフの清潔感漂う店。
そして気がつけばその足を止めている自分がいた。
どうもその雑貨店から目がはなせない。
まるでこちらに来いと誘われているかのようだった。

それにつられるようにして近寄り、
中のショーウィンドウを除けば、
青く輝く宝石のストラップが彼の視界にキラリと輝いた。

「ん?これどっかで見たことが...?」
「ナツゥ?どしたんだよーっ早くギルドにいこうよぅーおいらお腹減っちゃったぁ。」
しびれをきらし、自分の腕を引きながら唸る青い猫をなだめながら更にそれを凝視する。

そして思い出した。

_そうだこれ、グレイが持ってたやつだ...。

純潔な青。確かにグレイが指にはめていた石だとナツは深く頷く。
ストラップと、彼が持っていたものと形は違うがなぜか無償に気になって気がつけばその足を雑貨店へと踏み入れていた。
「えーはいるのぉ?」
渋々といった様子のハッピーを肩にのせると、ナツはその照明に反射してキラキラと光を放つストラップを手にとってみる。

たしかこれをグレイは赤といっていたか....

内心呟きながら手のひらでそれをコロコロと転がしてみた。
しかし、どの角度から見ても、両手で暖めてみても、その石に変化は見られない。
当たり前といったら当たり前だ。

「...待たせて悪ぃなハッピー、行くか!!!」
「あいさ!!」

なぜか無償にがっくりときてナツはため息をつきながらそれをもとの場所に戻すと、出入り口へと足を向ける。
実際に手に取ってみたら何か発見があるのかと思ったが、どうやらその様子は見られなかった。

_ぜってーあの氷野郎の勘違いだって..!!!

あの言い争いの後、悔しそうに帰って行ったグレイの背中を思い出しながらナツは鼻で笑ってやる。
ハッピーが
「うわぁ、なに一人で笑ってるの?ナツー」
と怪しげな視線を送ってきたことはみなかったことにして、入り口の取っ手に手をかけた。

その腕の間からにょきりと登場する小柄な老婆。

「もし。」
「うぉおぉおおっ!!!!?」
「ひゃぁあああぁっ!!!!!」

ナツは尻餅をつき、ハッピーはパニックを起こして自由奔放に飛び回りと、店のなかは一気に騒がしくなる。
しかし、それを愉快そうにけらけらと笑うと老婆はにっこりとナツの前で微笑んだ。

「あんた、そこの石をお目当てかね?」
「は!!?なんだよばーさん驚かせやがって!!!」
「ほほほ、若いもんの驚いた顔を見るのは愉快でのぅ...

しっかし、最近はこんな店にも魔導師さんがよくくるもんじゃ...。」
その言葉を聞いたナツの片眉がピクリと反応を示す。

_魔導師がよく来る...だと?
もしかして...

「あのさ、最近きたやつで、黒髪でタレ目で額に傷のある...」
「十字架かな...ネックレスをつけててね。
おまけに突然服を脱ぎ出してね、上半身裸だったよ。
お前さんとおんなじ紋章を胸元に引っ付けてたかな。」
とんとん、と右腕を叩かれ、ナツのあいまいな予想は確信へと変わっていった。

_やっぱりグレイはここで指輪を買ったのか。

なら話は速いと、ナツは拳を握りしめながら口を開く。


「あのさ、あの石のことなんだけどよ__」
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