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□雨のち雷。そして晴れ。
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「あんたなにやってんの?」

目の前にした突然の出来事に金髪の少女は驚いたように顔を歪めた。
彼女の視線の先には深い闇をイメージするような瞳の彼がひたすらに自分から目を反らそうとしている。
目、どころか顔全体がすでに明後日の方を向いているのだが。

「よ、よおーっルーシィ!!!!
はよ!!!」
「あははっおはよー!!!!


_じゃなくて。」
きっと説明しようのない状況を誤魔化そうとでもしたのだろう。突然交わされた挨拶に返事をするもルーシィはびしりと突っ込みをいれた。
「あたし、なにやってんのかって聞いてるんだけど!!!!」
「う。」
「しゃんと立ちなさいよ、ほら!!!」
それでもなお、そこから動こうとしないグレイの姿にルーシィは深い溜め息をつく。
『そこから』というのは
ギルドに並べられた多々のローテーブルのひとつのことで、彼はその下に身を隠すようにしてしゃがんでいたのであった。
今まで自信に道溢れ、堂々とした彼しか見てこなかったルーシィはまるで小動物が丸まるようなその動作に疑問を抱えざるを得ない。
「ほーら、怖くないからっ
出ておいでっ」
「ガキ扱いすんな!!!」
「じゃあ早く出てきなさいよ。」
「.........。」
むすっと膝に顎を乗せたその表情は18歳の青年には見えないほどに幼かった。
思わず頭を撫でてしまいたくなる衝動をルーシィはひたすらに抑えつける。
「ってかさー理由くらい教えてくれたっていいんじゃないのーっ?
ほらっ、私たちの仲でしょ?」
「どういう仲だよ!!!
俺にも隠したくなることの1つや2つくらいあったって...」
「恋敵ぃいいっ!!!!!!

グレイ様とそういう仲とはどういうことだぁぁあ!!!!」
「ひぃいいいいっジュビア!!!?」
突然会話をする二人の間を別つようににょきりと澄んだ水色の髪の少女が姿を表した。

_どんな登場の仕方してんのよ!!!

まるでホラー映画にでも出てきそうなジュビアの登場にルーシィはがくがくと震える肩をさする。
そんな彼女にはお構いなしにジュビアはグレイの方へと一目散に向き直るとテーブルの下へと隠れる彼へ大量のハートマークを送り始めた。

「あぁ〜んグレイさまぁんっ
今日も一段と素敵ですわ!!!
しかも今日はテーブルの下に隠れるなんてっ可愛すぎますっ
お・ちゃ・めっ☆」
「お、おい落ち着けジュビアっ。
悪いが今日はお前と話してる余裕が___」
「じゅビィイインッ!!!!
ど、どうしてですの!!!?
今日はさんさんと晴れた素敵なお天気日和!!!
グレイ様とお話ができないなんてジュビアは...っジュビアはぁあっ_」
「いや、雨じゃない、今日。」
新喜劇のような大げさなリアクションにもルーシィは容赦はしない。
ざんざかと雨が打ち付ける窓を指差せばジュビアはそそくさとその身を引いた。
「な、!!!恋敵!!
もしやこの雨をジュビアのせいにしようったってそうはいかな」
「言ってないわよ。」
バンッとギルド内にも関わらず傘をさして自分を警戒するジュビアにルーシィは今日何度めかも分からない大きな溜め息をつく。

_とにかくテーブルの下からあいつを出してやることが最優先ね。

なぜだか分からぬまま、グレイがテーブルの下に隠れているのを見つけてからもう10分はたっている。
きっとルーシィが来る以前からも潜り込んでいたのだろう、時おり足腰をつらそうに伸ばす仕草も見られた。
そんな彼にルーシィは優しく微笑みかけると未だぶすくれるその顔に明るく声をかける。
「ね!グレイ!!!
リクエストボード見に行きましょうよ!!!
気分が落ちてるなら何かクエストでも受けて元気だそう?」
「抜け駆けかっ恋敵!!!!!
クエストならジュビアがグレイ様と....!!!」
「はいはい、あんたも一緒ね..。
ね、グレイ?」
「ば、ばかか!!!!?_っつ!!」
「うわっ!!!?ちょ、大丈夫!!?」
「きゃぁああっ!!!グレイさま!!!!?」
突然怒りをあらわにしたグレイがテーブルのしたで勢いよく身体を揺らすと同時に低いテーブルへと頭を打ち付ける音が響き渡った。
ガツンっと大きく震動した衝撃音にルーシィとジュビアはあわあわとその姿を見つめることしかできない。
たんこぶができたその頭を擦りながらグレイは弱々しく唸ると、呆然と見守る二人に向かってぺっぺと払い手をした。
「悪ぃ...っ今日は出掛けに行く気分じゃねーんだわ...。
行くなら二人でいってくれ...」
「い、嫌です!!!誰がこんな女なんかと...!!!!」
「あははー、こんなって...それはないわよー....

それよりかほんとに大丈夫なの?
あんた顔色さっきよりか悪くなってない?」
ぶつけた所為もあるかもしれないが、それにしてもグレイの顔色は優れない。
どうにかしてやりたいところだが、理由も知れていない自分ではもとも子もなかった。
うー、と唸りながら腕を組んだ、
その時。

「おーいっグレイ!!!
どこにいんだー?」
「あ、ナツ。」
「ん?おおっルーシィっジュビア!!!おめぇらグレイ知らねーか?」
「....それが。」
ルーシィが視線を向けた先。
ナツは首を傾げると困ったように一点を見つめる彼女の目線を辿っていった。

とたんに盛大に吹き出す。

「ぎゃははははははっ!!!!!!!
てめぇ何やってんの!!!?
アホかっアホなんか!!!?」
「っるせぇつり目!!!
こうでもしなきゃやってらんねーんだよ!!!」
「おま、お前っ....!!
やっぱ怖いのかよ....っ
来てやって正解だったわ!!
ぶははっ!!!」
「ん?怖い?
何?ナツ何か知ってるの?」
突然訳が分からなくなった会話内容にルーシィは彼が何か知っていることを悟った。
確かに、当たり前といったら当たり前かもしれない。
まだ一年と少ししかいない自分と一年もいかないであろうジュビアとに比べたら、ナツとグレイが一緒に過ごした年月は何倍にもなっているはずだ。

_最初からこいつ呼べばよかったわ.....。

散っ々悩んだあげくに簡単な答えを導きだすとはなんたる失態とルーシィは痛む頭を抱えた。
隣ではジュビアが
「入れぬ男の絆...!!うらやま恨めしいっ...!!」
と呟いていたが、全力で無視をする。
ナツはそのまま容赦なくテーブルの下へと潜り込んでいくと嫌がるグレイの腕を強引に引っ張った。
「おら、もう俺来たから大丈夫だって!!!
でてこいよ!!!怖くねーからっ」
「お前までガキ扱いかよ!!!
いらんっ!!なんだよその手は!!!あっち行ってろ!!!!
しかもなに上からものいってんだよお前!!
年と身長考えろこのクソ炎!!!
つり目野郎!!!
すっとこどっこい!!!!」
「すっとこ....!!?
あーもーっうるせぇうるせぇっ!!!
年とか知らねーし、大体おめーは何でこういうときだけ必死になるんだよ!!!このバカ氷!!!」
ぎゃーぎゃーとわめき会う二人を止めれるものは誰もいないことは百も承知。
悔しげにハンカチを噛みながら颯爽と姿を消したジュビアに続き、ここはナツに任せて、とルーシィが逃げるように足を進めた。

その時であった。
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