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私は人に愛されませんでした。
父は私を殴ります。
母は私を叱ります。
ご近所さんはそれをみて可哀想だと同情ばかり。
助けてくれなどしてくれません。
お手伝いを欠かさずしても、
誉めてくれる人はいません。
抱き締めてくれる暖かさもありません。
どうして私はいきているんでしょう。
落とした皿が足元で割れました。
どかどかと荒い足音が近づきます。
ああ、また今日も家を追い出されました。
もうこんなことにも慣れっこです。
涙さえ流れません。
一人、一人。
私は一人。
莫大な魔力は時として人を救う。
でも私に残されたのは拒絶のみ。
パパ、ねぇ、パパはどこ?
私に魔力をくれた父はどこなの?
この気持ちを分からない母さんなんていらない。
偽物の父さんなんていらないの。
私の気持ちを理解してくれる
たった一人の死に別れた父親。
枯れたはずの滴が頬を濡らしたとき、
私の足下を赤茶色の犬が通りすぎました。
少し汚れて足を引きずったその子犬は、
とても綺麗な瞳をしていました。
私と同じ、まっ黒い瞳。
そう、お前も一人なの.....。
ポケットに忍ばせた、
今日の私を繋ぐ、ひとかけらのパン。
こんなに傷ついてるの。
少しくらい分けてあげたってかまわないでしょ?
小さいパンをさらに半分に分けて口許へもっていくと、
ハグハグと一生懸命に口を動かす小さな子犬。
お腹がすいているのね、かわいそうに。
そっとその毛並みに手を這わせた時だった。
「おい、何をしている!」
鋭く、きつい、
男の声。
ちがうわ、この人はパパなんかじゃないの。
バシリと今日も頬を貼られる。
腫れた頬はいつからもとの大きさに戻らなくなったのだろう。
目の端では子犬が怯えたような瞳をして私を見てた。
ああ、ごめんね、怖がらせちゃったね。
はくはくと口を動かして伝えようとするけど、
もう、
限界。
私はゆっくりと、意識を手放しました。
ああ、人間って、残酷ね。
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