イナGO

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結婚なんて、私たち少年少女が使う言葉じゃない。
でも使わなければならなかった

白竜も感付いていたから


代表者発表は妙な静けさを醸す異様なものだった
発表を待つ者達の緊張感で張り詰めた空気は、息苦しささえ感じさせた。
牙山の口が開くと、皆が固唾を飲み込んだ
「代表は剣城京介だ」
牙山のえげつない言葉に目眩を覚える
「なぜっ」
震える白竜に京介くんは一度も目をやることはなかった

「終わっちゃったね」
私は白竜から離れる覚悟を態度で示そう。
もう会うことも叶わなくなってしまうだろうから
叶わない夢なら諦める事が聡明である。
「そうそう、せめて白竜の13歳の誕生日までは一緒にいさせてほしかったわ」
私の精一杯の強がりは強がれなかった

「白竜、大丈夫よ」
私は最初からいらない子だったんだから。
「小春と誓ったのに…!」

はたぱたと膝に落ちる雨粒。
白竜の涙であるのか、それとも雨であるのか
見上げた空から白い矢になった雨粒が落ちてくる。
「ねぇ、部屋に戻ろう」
それから私はここを追い出される準備をしよう

何一つとして残さぬように。

たった一つだけ残して行くなら、そうね、私がいたって言う不安定な記憶ね
「まだ居てくれるだろ?小春」
頷かないで終わりだと言ってみた。

「出ていくのか?」
私の契約内容は明かさない。
白竜を潰すことになってしまうから
「出なくちゃ」
「帰ったら」
白竜の言葉を遮るのは私の言葉
「白竜のお母さんとお父さんに伝えるよ。元気だよって」
「ありがとう」

「それじゃあ、きっと今日が最後だから」
「また会うその時まで」
「婚約指輪に誓って」

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