イナGO
□あなたのために
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「全部望まなきゃ意味がないの」
小春はそういって俺から手を離した
「プール冷たかった」
「師走のプールだからな」
「そこは普通怒るところだよ」
「そうなのか?」
小春は、それなら霧野はどこでどんな時、私を怒るのかと聞いてきた。
毛布を被ってくしゃみをした小春を横目に答えを探す
「そうだなぁ」
悩めばピシャリと言葉は尻を切られてしまう
「答えるの遅いから私が決めてあげる!」
霧野が怒るのは
「私が大丈夫って言った時」
「なぜ?」
「大丈夫って言う人は大丈夫じゃないからよ」
いつも(名前)は大丈夫だと言う。
つまりはそれを鵜呑みにするなと言うことか
「わかった」
簡単にわかったといえばまた小春は膨れる
「霧野はそうやって!」
噛みついてきそうな勢いの小春の口をキスでふさいだ
「これも小春は、そうやってと言うかい?」
「言わないよ!」
赤くなった顔は見られたくないだろうから
小春の冷えた身体を抱いて、顔を見ないようにした
それから大切なことを一つ言おう
「怒りたい時には本気で怒るよ」
それを小春が望むなら―――