好機逸すべからず
□幼少編2
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「今からイタリアに行くぞ」
もう嫌だ、この父親。
久しぶりに家に帰ってきたと思ったらコレだ。
今は夏休みだからいいけど、こっちの都合も考えて欲しい。
「ってなわけで、今度会えなくなった。ごめんね」
【いえ、構いませんよ。高貴な私の高貴な親友の柚希。家の都合なら仕方ありません】
そう、夏休みは直とかと過ごす予定だった。
中々会えないのだが、この夏休みは時間が取れたらしかったから私も楽しみにしてたのに…
「もー。嫌だ」
【…確か、イタリアでしたね?行くのは】
「?そうだよ。父親がそこで働いてるからさ。弟のお披露目も含まれてるのかなー。てか、それがメイン」
もうあんたらだけで行ってくれ。
本当にそう言いたいよ。
【……】
「直?」
急に黙り込んでしまった直に声をかけると、直はクスリと笑った。
【何でもありません。楽しんできて下さい】
「嫌味か。…まぁ、イタリアなんて滅多に行かないからね。楽しむよ」
【えぇ。では】
「ん」
電話を切って、下に降りていく。
「柚希ちゃん準備できた?」
「うん。もう行く?」
「えぇ!楽しみね〜。イタリアなんて」
「そうだね」
私は憂鬱で仕方ないけど。