断じて行えば鬼神も之を避く
□誘惑者
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何故か、何故かまた私は犯罪エスパーの収容施設に来ていた。
「その少年―――この人物に間違いないなだナ!?」
局長が皆本くんに見せる写真は、兵部が写っている。
「ええ!誰なんですか!?ここ、犯罪エスパーの収容施設じゃないですか!まさかここに…!?」
「そのはずだ……!!理論上はナ…!!そうだネ、小鳥遊クン!」
「えぇ。理論上は、ね。」
まぁ、兵部に理論なんて通じないんだけど。
「ここは地下500メートル―――彼のためだけに造られた特殊官房でネ…」
「!!局長…!!また何か…!?監視は24時間続けてますし、計器とモニターにもなんら以上はありません…!!彼が外に出たはずはないんです…!!」
「あいつめ……!!この50年間ずっとそうだ……!!」
厳重な扉を開けると、この間設置したECMが目に入る。
「な、なんですかこの厳重な警戒は!?」
皆本くんはやはり驚いている。
当たり前か。
こんなに厳重にしないといけないエスパーなんて、早々いない。
まぁ、これだけ厳重にしてても意味のない人だけれど。
「奴の名は兵部京介。エスパー史上最悪の人物なのだヨ……!!」
「やあ桐壷クン。20年ぶりかな…?変わらず若々しいね…!!」
皆本くんに兵部を紹介するが、当の本人は飄々としている。
全く。これで80だなんて誰が信じるだろうか。
「は、80!?」
あれ、私声に出てたかな。
「彼は老化遺伝子(テロメア)をコントロールして老化を免れているのだ。超能力でナ…!!」
「いやだなあ、ここで超能力が使える訳ないじゃないか。ただの特異体質だよ。キミと違って僕は寄る年波には勝てそうにないね。」
「とぼけるな!!あんたはこれまで何度も、記録も残さず外に出ている…!!新型ECMも役にたたんようだナ……!!」
「そうヘコむ必要ないさ。キミだってがんばってるじゃない。……いや、がんばってるのは渚だけどね。」
「え?小鳥遊さん?」
皆本くんが驚いたように私を見る。
「知らないのかい?新型ECMは彼女が作ったんだよ。それにしても珍しいね。キミが1週間も経たないうちにここに来るなんて。」
「連れて来られた。誰が好き好んでこんなとこに来るか。」
「辛辣だなぁ…!」
クスクスと人を馬鹿にしたように笑う声に、眉を寄せる。
「念動能力(サイコキネシス)、精神感応(テレパシー)、瞬間移動(テレポーテーション)…。彼は様々な能力を兼ね備えた複合能力者でネ、だがその超度も種類も我々には不明―――ここ10年ほどおとなしかったあんたが…『チルドレン』になんの用だ!?」
「興味があるのさ。可愛い子たちだからね。
将来僕の花嫁にしたい―――――…って言ったらどうする?」