断じて行えば鬼神も之を避く
□プリンセス・メイカー
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「『ザ・チルドレン』に次ぐ、貴重な『超度6』…!!まだ若いが仕事は正確・確実!おまけに清楚で上品、素直で美しい…!!」
そう熱く語るのは、特務エスパー『キティ・キャット』である梅枝ナオミちゃんの現場運用主任、谷崎一郎さん。
「イヤミに聞こえるんは気のせいか?」
「なーに、あたしだってすぐにあーなるねっ!!」
「無理よ、薫ちゃん。」
「うらやましいかね!?うらやましいだろう!?皆本君!!」
下品に笑いながら皆本くんに聞く谷崎さん。
チルドレン達はじろり、と皆本くんを睨んでいる。
「え…えーと、今答えなきゃダメですか?」
羨ましいと言えばチルドレンから報復が。
羨ましくないと言えばナオミちゃんを傷つけてしまうだろう。
損な役だね、皆本くん。
「で、その『キティ・キャット』が『チルドレン』に何か…?」
「うむ、じつはな…」
いつの間にあったのか、天井からぶら下がっている紐を谷崎さんがぐいっと引っ張ると、タライが薫ちゃんとナオミちゃんの上に落ちてきた。
「な…何!?」
「きゃ…!!」
「うわッ!!」
薫ちゃんは難なく超能力で止められたが、ナオミちゃんは止められなくて、皆本くんの近くにあったパソコンで皆本くんを攻撃していた。
うーん、スランプか?
「…と、このように彼女は今、深刻なスランプに陥っていてね。超能力がうまく使えないのだ。」
「体はなにも異常がないようですし、同じ念動能力者(サイコキノ)で『超度7』の明石さんに何かアドバイスをしていただけないかと…。私、早く治して主任の期待に応えたいんです…!!」
何ともまぁ、こんな変態親父にそこまで健気になれるもんだよ。
私なら無理だ。
絶対無理だ。
「こんなにも愛らしく美しい私のナオミのために、少し時間を割いてはくれまいか。」
「そりゃ喜んで協力しますが―――」
カタカタ
小さく、パソコンが動いた。
皆本くんもそれに気付いたようで、紫穂ちゃんに何か指示している。
「葵ちゃん。」
「ほな、女の子同士で話そか!」
「え、」
「ちょっと行ってきまーす!!」
葵ちゃんが瞬間移動をする直前に口外不出(ゲートアウト)≠ナナオミちゃんの心の奥底に眠る感情を見た。
………成程。
これは薫ちゃん大活躍かな。
「―――さん!小鳥遊さん!」
「…………ん、何皆本くん。」
「大丈夫ですか?全然反応がありませんでしたが…」
「大丈夫。最近忙しいだけ。――にしても、谷崎さん。ナオミちゃんがああ≠ネった理由、分からないんですか?」
「ああ。本当に突然スランプに陥った。」
自覚なし、ってのがまた嫌だな。
「まぁ大丈夫でしょ。薫ちゃんのアレ≠ナきっとナオミちゃんも自分の気持ちをちゃんと出せるようになると思うし。」
「! 原因が分かってるんですか!?」
「ちょっと考えればすぐ分かるよ。特に、谷崎さんは。」
無理だとは思うけどね。