断じて行えば鬼神も之を避く
□傍迷惑な客
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皆本くんは葵ちゃんと京都へ。
薫ちゃんと紫穂ちゃんは賢木くんが見てくれるので問題なし。
久しぶりにバベル内で暇になった私は、ECMの向上のために研究室に来ていた。
「出力上げてもまだ耐えられる?」
「はい。まだ耐えられますが、兵部少佐にはやはり…」
「兵部に関してはほとんど諦めてるよ。アイツは他とは違うんだから、少しでも威力を強めてアイツの力を弱ませるのが目的。」
「え…そうなんですか?」
「そうだよ。兵部の超能力の資料がもっとあったらまだ改善の余地はあるけどね。」
「資料…ですか。」
「そう。だから―――
少しでも協力してくれたら嬉しいなぁ、とか思ってるんだけどね、兵部。」
そう言って、さっきから私と話している見覚えのない男を見た。
「へぇー。よく僕だってわかったね。」
「この研究施設に入ってる人の顔は憶えている。もし新しく入っても、千里が私に報告してくるからね。」
「全員の名前を憶えてるのかい?よくやるね。」
「あんただって、パンドラにいる人の顔と名前、憶えてるでしょ?」
「そりゃあね。」
それと一緒だよ、と言うけど、実際は違う。
この研究内容が他に漏れないようにするために私は憶えているのであって、兵部のように親しみを込めての意味ではない。
「それで?私に何の用?」
「特にコレといった用はないよ。ただ君に会いにきただけだ、渚。」
「今すぐ帰れ。」
そうは言っても帰らないんだろうけど。
「それにしても珍しいね。渚がチルドレンやあの坊やと一緒にいないなんて。」
「管理官、呼んだらすぐ来てくれるかな…」
この人の相手は疲れることが分かってるから相手をしたくない。
「あぁ、不二子さんが起きたんだってね。おかげで無暗にチルドレンに会えなくなったよ。」
「それは良かった。……用が無いんなら本当に帰ってくれる?今、忙しいんだけど。」
「忙しくなかったら来てもいいのかい?」
「言葉の綾ってのを覚えてくれないかなぁ?」
ヒクッと頬を引きつらせ、拳銃を手に取る。
「そんな危ないモノ、持たないでくれるかい?」
けれど瞬間移動で一瞬で奪われる。
「………分からないなぁ、本当。私はあんたが毛嫌いする普通人だよ?なのにどこに惚れる要素があるんだか。」
「君は他とは違うからね。」
確信めいた言い方に、一瞬だけ動きを止めてしまう。
「……」
「皆本や、桐壷くん、他にも色んな人に隠している事があるんだろ?それが何かはまだ分からないけどね。」
「……もし、兵部の言う通りに私に隠している事があったとしても、私が普通人だという事は変わらない。」
「そうだね。でも、そんなのどうとでもできる。」
「……あっそ。」
もう兵部を追い出す事は諦め、重要でない書類整理などを片付けるだけで1日は終わった。