好機逸すべからず

□幼少編4
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「起きろ」


バシィッ


「うぐっ」



深い眠りから目覚めたのは、惟臣からの痛い拳のせいだった。




「惟臣…。もうちょっとマシな起こし方…」




「今度、並中に見学に行くらしい」




「無視か。てか見学?何の変哲もないのに?」





「並盛は、良くも悪くも普通の町だ。
誇る所なんて………あるのかな?





「あぁ。だが、今の並中は荒れてるらしいぞ」




「荒れてるぅ?」



「不良が多いらしい」



「ふっうーん」



不良のたまり場と化してるんだ。
別に私はそれでもいいけど、折角の中学ライフを邪魔されるのは嫌だなぁ。

そこで私はある事を思い付き、ニヤリと笑った。




「………面倒事は起こしてくれるなよ」




「しないしない。少なくとも今は」




中学に入ってからやらないと、面白くないからね、コレは。




「今は、な…」




若干諦めたように言う惟臣。
どうやら私の言葉の意味が分かったらしい。




「流石私の親友」




「お前の親友は他にいるんじゃなかったのか?」



「?」




何を、言ってるんだ?この馬鹿は。



「惟臣も私の親友だよ。ここまで腐れ縁で、然も何だかんだ私に付き合ってくれる。まぁ、悪友とも言うけどさ」



パチンッと片目を瞑って言えば、惟臣は一瞬惚けた顔をして、若干照れくさそうに顔を背けた。
だが、それは一瞬ですぐに元の表情に戻って私に「何をするつもりだ」と聞いてきた。



「中学に入ったら取り敢えず風紀委員に入る」



「風紀委員?何でまた………ん?まさか、お前…」




ヒクヒクと頬を引きつらせる惟臣。

流石、私の考えてる事が分かったみたいだね。




「せーかい。風紀委員になったら、不良を潰しても理由があるし、学校もそういう生徒を排除できて、私はストレス発散できる。まさに一石二鳥!」



本当の理由は、少しでも強くなりたいからなんだけどね。
将来の為に。




「…………お前なぁ…」



「勿論惟臣には迷惑かけないよ。巻き込むけど」



「その時点で迷惑になってんだろうが、アホ」



ベシッと頭を叩かれる。




解せない。




「はぁ〜。まぁ、お前を1人にしたらしたで我が道を突き進むからな。俺でもストッパーになるだろ」




「何だかんだ言ってさ、惟臣って私の我儘聞いてくれるよね」




「我儘と分かってるなら直せ!!」



「むーりッ」



けらけらと笑って即答してやった。


でも、結構惟臣には救われてるんだよねー。
私って、時々自分の運命とやらにイラついたりする。
その時周りに八つ当たり…はしないけど、態度が激変するんだよね。
そんな私に皆は近寄ってこない。
けど、直や…惟臣は違った。
私が苛ついてたらその理由をちゃんと聞いてくれて、聞かないでほしい事は聞かないでいてくれる。
それにどれだけ私が救われてるか…。





「中学が楽しみだねッ」





「俺は楽しみなんかじゃない」





ありがとう、なんて言わないけど。


 
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