好機逸すべからず 番外編

□狐との出会い
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中学三年生の秋、そろそろ進路も決めないとなーなんて思っていた時に、直が


「ちょっとイギリスまで行ってきてください」


と言った。

いや、どこがちょっと?
普通に平日だし、一応受験生なんだけどな。

そう言ったら「必要ですか?」と笑われけど。


「後はあの企業に回ったら終わりかな」


書類に目を通し、喫茶店で紅茶を飲んでいると、目の前に一人の男の人が座った。


「日本人……しかも学生がイギリスにいるのは珍しいな」


「?……誰ですか?」


「『誰ですか』。ふん、俺がここで名乗ろうが名乗るまいが、それはどうせ同じ事だ」


「……」


相手の言葉を反復する人を、私は1人知っている。
けれどそれは前世の記憶があるからなのだけれど。
けど、えぇー……


「沢田柚希」


男は名前を教えてもないのに名を呼ばれた。


「俺は――なんというかな、いわゆる“変な奴”を集めている。何人でもいい――とにかく、集められるだけ、“変な奴”を集めたいと思っている」


だからなんだ、と言いたくなったが、それじゃあ話が進まなそうだったので続きを待つ。


「お前は、なかなかに――逸脱している。“お前には物語の登場人物になる資格がある。”代替役(オルタナティブ)がきかなさそうな役割(ポジション)が与えられている。お前は変な奴だ。だからお前は――面白い」


初対面で“変な奴”だなんて、失礼極まりない。


「俺は世界をさっさと終わらせちまおうと思っている。この面白い世界の――終わりがどうなっているのか、知りたくて知りたくて仕方がないのさ」


「………」


「俺は――世界の終わりが見たい」


世界の――終わり。
終わり、か……。


「人が従うべきは――『運命』だけ」


ピクリと、“運命”という言葉に反応して男を見る。


「お前の役割(ポジション)は――お前の運命は俺が決めてやる」


なんて高慢。
なんて傲慢。
なんて罪悪。
なんて最悪。


「さあ――選べよ、柚希」


男は私に手を差し伸べる。


「俺と来たら――気持ちいいぜ」



 
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