好機逸すべからず 番外編
□狐との出会い
2ページ/5ページ
中学三年生の秋、そろそろ進路も決めないとなーなんて思っていた時に、直が
「ちょっとイギリスまで行ってきてください」
と言った。
いや、どこがちょっと?
普通に平日だし、一応受験生なんだけどな。
そう言ったら「必要ですか?」と笑われけど。
「後はあの企業に回ったら終わりかな」
書類に目を通し、喫茶店で紅茶を飲んでいると、目の前に一人の男の人が座った。
「日本人……しかも学生がイギリスにいるのは珍しいな」
「?……誰ですか?」
「『誰ですか』。ふん、俺がここで名乗ろうが名乗るまいが、それはどうせ同じ事だ」
「……」
相手の言葉を反復する人を、私は1人知っている。
けれどそれは前世の記憶があるからなのだけれど。
けど、えぇー……
「沢田柚希」
男は名前を教えてもないのに名を呼ばれた。
「俺は――なんというかな、いわゆる“変な奴”を集めている。何人でもいい――とにかく、集められるだけ、“変な奴”を集めたいと思っている」
だからなんだ、と言いたくなったが、それじゃあ話が進まなそうだったので続きを待つ。
「お前は、なかなかに――逸脱している。“お前には物語の登場人物になる資格がある。”代替役(オルタナティブ)がきかなさそうな役割(ポジション)が与えられている。お前は変な奴だ。だからお前は――面白い」
初対面で“変な奴”だなんて、失礼極まりない。
「俺は世界をさっさと終わらせちまおうと思っている。この面白い世界の――終わりがどうなっているのか、知りたくて知りたくて仕方がないのさ」
「………」
「俺は――世界の終わりが見たい」
世界の――終わり。
終わり、か……。
「人が従うべきは――『運命』だけ」
ピクリと、“運命”という言葉に反応して男を見る。
「お前の役割(ポジション)は――お前の運命は俺が決めてやる」
なんて高慢。
なんて傲慢。
なんて罪悪。
なんて最悪。
「さあ――選べよ、柚希」
男は私に手を差し伸べる。
「俺と来たら――気持ちいいぜ」