好機逸すべからず 番外編
□『零崎軋識の人間ノック』
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「――じ、主、起きて下さい」
肩を揺さぶられ、薄く目を開ければそこには私の奴隷である憑依がいた。
「ひょ……い?…なんで、ここに……」
「主がわたくしのことを呼んだからですが」
「あー……そう…だっけ……」
ソファーから起き上がり、ガリガリと頭を掻く。
「申し訳ありません」
「ん?」
「ハードディスクを、奪還する事ができませんでした」
「へぇ……、“珍しい”ね」
「申し訳ありません」
「んーん、怒ってないよ。どうして失敗したの?そっちの方が気になるかな」
憑依が失敗するなんてこと、今まで一度もなかったのに。
「哀川潤」
「ん?あいかわじゅん?」
「えぇ。赤毛のお嬢さんに邪魔をされました。いえ、赤毛のお嬢さんだけではないのですが。萌太の話によると“おじさん”もいたそうですし」
「赤毛のお嬢さん…おじさん……ぷっ、あっははははははははは!!!」
「主?」
「ふふふふ!赤毛のお嬢さんにおじさん…ねぇ……。確かに、萌太くんから見たら“彼”はおじさんの年になるのかな?」
そう、そうか。
あの話に関わることはないと思っていたけど、こんな形で関わる事になったのか。
「知り合い、ですか」
「まぁね。赤毛のお嬢さん…哀川潤は≪人類最強の請負人≫、≪赤き征裁≫、≪死色の真紅≫、≪疾風怒涛≫、≪砂漠の鷹≫……あれ、これとか言っていい時間系列だっけ?まぁいいや」
「……詳しい、のですね」
「一度殺されかけたからね」
「は?」
驚いたようにこちらを見る憑依。
そんな憑依に苦笑いをして、少しだけ話す事にする。