断じて行えば鬼神も之を避く
□あの子達は天使じゃない
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局長室にて。
「ま、いーんじゃないかネ、皆本クン!なんといっても犯人は捕まったし、ケガ人も出なかったしネ!」
にこにこと笑いながら言う局長に、「僕は!?」という皆本くんの訴えは無視された。
「君たち、これからはちゃんと規制を守れるかナー?」
「はい♡」
「できます♡」
「局長♡」
キラキラと先程までとは別人のように接するチルドレン。
柏木さん、顔引きつってる引きつってる。
「ならもう行ってヨシ!今日はエラかったゾー!!」
「はい♡」
「さよーなら、局長♡」
ぱたんと閉まった扉を見て、皆本くんは
「ちょ…!!局長!?今日という今日は叱ってくださいとあれほど―――ぶッ!!」
局長に異論立てして殴られた。
「な…何するんですかッ!?」
「これを見ろ!!心理調査部があのコたちに書かせたものだ!」
「作文…?」
「皆本くん、私にも見せて。」
少し興味があったので、皆本くんから作文を受け取って読み上げる。
「『私の将来の夢』」
薫ちゃん
将来の夢は、特になし。
葵ちゃん
ありません。投了。
紫穂ちゃん
以下同文。
「……」
どう思うかネ、皆本…!!日本の未来を背負っている三人がだ!!人生これからというあの年で夢がないなど…!!大問題だヨ、キミ!!」
「心理調査部もこの作文には憂慮しています。なにせ、あの三人は『超度7』!小さな頃から他の子供と遊べず、大人たちもそのパワーに振り回されてきました。ただでさえ反抗的で社会性に欠けているのに、将来の希望が持てないとなると…………
史上最強・最悪の非行少女が誕生してしまう可能性があると…!!」
あの子達に限って、そんな事ないと思うのは私だけだろうか。
チラッと皆本くんを盗み見、そんな事を思う。
「そんな大げさな……!!いきなりそこまで心配しなくても―――」
「心配しなくても!?バカ者おぉーーーッ!!心配しろッ心配をおぉーーーッ!!あのコたちは国の宝なのだヨ!?大事に大事に大事に育てねばならんのだッ!!今すぐ何か手をうちたまえッ!!このままでは国の未来が……!!」
局長が皆本くんの胸倉を掴み、泣きながら訴える。
「…そんなことを言われてもっ!?あいつらがそう思ったんなら仕方ないじゃないですか!無理強いしてウソを描かせるわけにも…」
「そこをなんとかするのがお前の仕事だろぉがあぁッ!!できんというなら、一生オホーツク支部で雪かきだッ!!私は本気だヨ、皆本クン!!」
「そっ、そんなムチャなーーー!!てか、大体そういう仕事は小鳥遊さんの仕事じゃ!?」
「皆本くん、頑張って。私、面倒な事はしない主義なの。」
「んなーーー!?」
叫ぶ皆本くんに私は手をヒラヒラと振って
「それよりチルドレンの精密検査した方がいいと思うよ?」
そう言って局長室を出る。
「……私がしちゃダメなんだよ、皆本くん。私は所詮、イレギュラーなんだから。」