2vV
□祇園蝶様からvV
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衝動
誰かに目撃されなかったかと周囲を見渡し、これ程までに安堵したのは初めてだろう。
無意識な自分の行動に、更木剣八は頭を抱えた。
それは少し前の事。
木陰に横たわる人影を見つけ、剣八は歩み寄った。
「寝てんのか…」
草むらに広がるは桃色の髪。
この鮮やかな色の髪を持つのはただ一人。
「…やちる」
名前を呼んでみるが、やちるは身動ぎすらしない。
実に気持ち良さそうに眠っている。
剣八はその傍らに腰を下ろした。
髪についた鈴が風に揺れて、その音色が自らの耳に入る。
「……」
雲一つ無い空を見上げ、やちるに視線を移した。
こうして規則正しい寝息を立てる姿を、改めてまじまじと見てみると、やちるが随分と成長した事を実感する。
身長や体付き等の外見も、言行等の内面的なものも、随分と成長したものだ。
それでも時折幼く感じるのは、その自由奔放さからだろうか。