2vV

□祇園蝶様からvV
1ページ/4ページ

衝動



誰かに目撃されなかったかと周囲を見渡し、これ程までに安堵したのは初めてだろう。


無意識な自分の行動に、更木剣八は頭を抱えた。





それは少し前の事。


木陰に横たわる人影を見つけ、剣八は歩み寄った。

「寝てんのか…」

草むらに広がるは桃色の髪。

この鮮やかな色の髪を持つのはただ一人。


「…やちる」

名前を呼んでみるが、やちるは身動ぎすらしない。

実に気持ち良さそうに眠っている。


剣八はその傍らに腰を下ろした。


髪についた鈴が風に揺れて、その音色が自らの耳に入る。

「……」

雲一つ無い空を見上げ、やちるに視線を移した。


こうして規則正しい寝息を立てる姿を、改めてまじまじと見てみると、やちるが随分と成長した事を実感する。

身長や体付き等の外見も、言行等の内面的なものも、随分と成長したものだ。

それでも時折幼く感じるのは、その自由奔放さからだろうか。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ