03/01の日記
14:16
過保護な愛情
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☆矢の夢小話。名前変換不可です。
アテネ市街
ルージュはふらりとお忍びでアテネ市街を満喫していた。市場は人で混雑しているが賑やかで活気あふれている。
ルージュは露店の商品を手に取り、店の主と軽く会話していた。
その様子を眺める黄金聖闘士たち・・・。カノンを始め、ミロ、カミュ、シュラ、アフロディーテの五人がお供していた。教皇シオンはルージュのことになると極度の心配性になってしまい、半無理矢理に付人をつけたのだった。
仕事をサボりがちなカノンとミロを捕え、そのミロの監視役にカミュが選ばれた。シュラとアフロディーテはたまたま教皇宮にいたことから道連れにされたのだった。
当然、責任を感じたルージュは聖域を抜けたところで五人に「私のことは気にせず、皆も楽しみなさい」と伝えたのだが、やはりそこはアテナの聖闘士。責任感は人一倍で、護衛に徹することを譲らなかった。
180cm以上の男たちに囲まれて、まるでSPのようだとルージュは苦笑していたが、慣れてきたのか輪から離れるようになった。
ア「こう見るとルージュ様はやはり女性だな」
シ「なんだ突然…」
突拍子もない発言をするアフロディーテを怪訝そうに見遣る黄金聖闘士たち。その中でシュラが応える。
アフロディーテは手塩にかけて育てた薔薇の香りを堪能しながら前方のルージュを見つめ続けた。
ア「君達だって思わないかい?教皇シオンや老師と並ぶ偉大な私たちの大先輩であるが、ああして笑って買い物をしていると、何も変わらない女性だと」
ミ「…前聖戦では男と偽ってまで黄金聖闘士になったと聞くが、根本的な部分は変わらないということか…」
カ「どちらでも構わないではないかミロ、アフロディーテ。あの姿もまたルージュ様なのだ」
カノ「カミュの言う通りだ。変に考えることはない」
シ「カミュとカノン同様、俺もそう思うぞ」
五人が眩しげにルージュを見遣るとのと同時にルージュは五人に振り向き小さく微笑んだ。
その女神にも勝とも劣らぬ微笑に五人は魅入り、独り言のようにミロが本音をもらす。
ミ「…本当に200歳を越えておられるのか不思議だな」
カ「ミロ!口を慎め」
ミ「カミュよ。お前だってそう思うから私をたしなめたのだろう」
カ「……」
ア「カミュ。ひそかに小宇宙を燃焼するのを止めてくれないかい?体によくない」
シ「体の問題でなくここは街だろう」
カノ「カミュ落ち着け。ミロのブレーキ役の君が沸騰してどうする」
カ「…すまない」
カノンとシュラは互いに溜息をつく。
そこへ話の種であるルージュが五人の元へ戻ってきた。
複雑な表情で見つめてくる五人にルージュは小首を傾げる。
「どうしました?」
カノ「あ、いえ…」
シ「ルージュ様。用事は終わったのですか?」
「ああ」
ア「何をお買い求めに?」
「糸です」
ミ「糸、ですか?」
カ「何をお作りなるのです」
「いつもお世話になっている皆に、ほんのささやかな贈り物を…」
カノ「ルージュ様…」
ミ「かたじけのうございます。楽しみだなカミュ」
カ「こらミロ。ルージュ様ありがとうございます」
シ「ルージュ様のそのお気持ちだけで十分です」
ア「ふふ、やけに珍しいなシュラ」
シ「黙れ」
ア「ルージュ様ありがとうございます」
シュラの睨みを素知らぬ顔で受け流し、アフロディーテは美しい笑顔でルージュに礼を言い、深紅の薔薇をプレゼントした。
ルージュは「ありがとう」と笑顔で受け取ろうとしたが、アフロディーテはその薔薇をルージュの栗毛に添える。
ア「ルージュ様。とてもお美しいですよ」
「…?ありがとう」
「「「「……」」」」
アフロディーテの魅了の一つなのか、四人はわぁ〜と言う顔で眺める。しかし、当のルージュはその意図に気付く様子もなくそのままにしていた。
ルージュを先頭に6人は聖域に帰ろうと歩く。
と、後方から騒ぎ立てるように声があがり、6人は振り向く。
遠くから馬車が走ってくる。貴族の血を引く輩なのだろう人がいるにも関らず馬車を走らせている。
カノ「全く…迷惑を考えんのか…」
ミ「同感だな」
カ「怪我人が出なければいいが…」
口々に漏れる言葉に微笑みながらルージュは幼い声を聞く。
「ルージュさま〜!!!!」
「?」
『?』
声のするほうを見れば小さな子どもがルージュに向って手を振っている。ルージュはその子どもを見て一瞬、目を見開き小さく手を振る。
子どもはルージュが気付いてくれたことに嬉しかったんかこちらに向って走りだした。それにルージュは驚き横から来る馬車との距離を考える。
「危ない!」
シ「ルージュ様!」
ルージュは袋を投げ出し、子どもの元へ走る。子どもの体をふわりと抱き上げ、感覚で馬車との距離を感じ取る。
幸い馬車との距離は十分、離れていると感じそのまま避けようと一歩前に踏み出そうとした時だ。
バスン
「……ぁ…」
『ルージュ様!!!!』
あまりの展開に市場が混乱し、叫び声があがる。
ただ見守るしかなかった5人は何が起きたのか一瞬わからなかった。
ルージュの横腹から滲み出てきた鮮血とゆっくりと倒れるの姿で5人は素早く行動をおこした。
カノ「カミュ!!」
カ「わかっている」
カミュはすっと小宇宙を燃やし馬車の動きを止めた。
カノンは光速でルージュに駆け寄り抱き起こす。子どもに怪我をさせないためにルージュは自分よりも子どもを大事に抱えていた。腕から抜け出た子どもはルージュの腹から流れる鮮血に泣きじゃくるばかりであった。
アフロディーテは子どもを抱きしめあやす。
カノ「ミロ、シュラ。わかっているな」
冷静に言い放つカノンの声は普段通りだが、その中に憤怒を感じさせた。ミロとシュラは銃弾の出所と犯人の追撃に無言で頷き光速の動きでその場から消えた。
カノ「カミュ、お前の凍気で患部の止血だけでも可能か!?」
カ「まかせろ」
カミュは手のひらを痛々しく血が流れ出るルージュのわき腹にかざし小宇宙を燃やす。
撃たれた患部は氷の結晶を放ち固まる。
それを確認しカノンはアフロディーテに子どもを避難させるように言う。
アフロディーテは涙している子どもを抱き直し、頷くとあやしながら駆けた。
カノ「カミュ。鎮圧を任せてもいいか?」
カ「ああ。早くルージュ様を…」
カノ「ああ。では、また」
カ「うむ」
カノンはルージュを横抱きに一瞬で消えた。
そして、小宇宙を燃やし白羊宮にいるムウにテレパシーを送る。
<ムウ!ムウ!!>
<解っていますよ。早く連れて来て下さい>
<気付いていたか…すまん私達がついていながら>
<今はそのような事を言っている場合ではないでしょう。お命がかかっているのです。貴方の小宇宙の見せ所ですよ>
<ふん。わかっている>
<では、着いたら入って来て下さいね>
テレパシーを切り、カノンは額にじんわり汗をかいているルージュの顔を苦渋の思いで見つめ駆ける。
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ん〜;;
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