03/16の日記
22:45
パロ
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ライト+ティナ
肌寒い夜。
ライトとティナは例の防音室にいた。
ライトは趣味のバイオリンを奏でている。
ライトがバイオリンを弾いている事を知ったティナは夜になると、ライトに頼み一緒にいさせてもらっていた。
ライトが奏でるバイオリンの旋律はティナの心に浸透し、独自の世界に引き込む。
ライト自身、全くその気はない。
しかし、ティナは「それ」がいいのだと言った。
自分では作り出せない世界をライトは簡単に作り出してしまう。
別にティナは自分を落ち着かせたいがためにライトを頼っているわけではない。無論、ライトもティナがそのような自己中心的な少女とは思っていない。
そう二人は無意識なのだ。
ライトという器にティナという人物がすっぽり収まっている。
何時ぞやの夜のように、ティナはふかふかのモーグリ人形を抱きしめながらソファに座り、ココアを啜っている。
ティナの前方には、自分に背を向けてバイオリンを弾くライトの姿。
ココアを置き、ティナは大きく逞しい背を眩しそうに見詰めると奏でられる旋律に目をつむる。
タイミングよく、ライトはバイオリンを弾きながらふと後ろを振り返った。
ソファに体育座りし、ふかふかのモーグリ人形を抱きしめて目を瞑る愛しい少女。いつも上で結ばれている美しい髪の毛は解かれて肩や背に散りばめられている。肩掛けを羽織っていても、パジャマは袖のあるワンピース一枚だけ…いかに兄弟たちをまとめる長兄ライトと言えど男なわけで、扇情的なティナの姿は煽りのなにものでもない。
自分が奏でる旋律に陶酔しているティナには悪いと思いながら、ライトはバイオリンをやめる。
突然、現実に戻されたティナはゆっくりと瞼を持ち上げ、奏者を確認する。
前方には先程、背を向けていた奏者でなく黙って自分を見つめる白銀の奏者がいた。
その瞳に哀を感じ、ティナは不思議そうに見詰める。
「ライト兄さん…?」
「……」
「どうしたの?」
「いや、」
「…私、邪魔…?」
「そうじゃない」
「…どうしたの?」
「少し、考え事をしてしまっただけだ」
「……そう」
どこか鋭い獣の本能のように人の中を探り当てる少女に、ライトは心配させまいと微笑む。
その微笑みが嘘でないと感じ、ティナも笑う。
ライトはバイオリンをケースにしまうとティナの隣りに座る。ティナはココアを一口し、台に置こうとした。
それをライトは優しく静止する。
「ライト兄さん?」
「私にもくれないか」
「?持ってくる、ね」
「…」
ティナはライトからココアが欲しいなど、珍しいと焦りモーグリ人形を横に置き、立とうとする。
ライトはティナの腕を引き、自分に寄りかかる形でソファに沈めた。
「…これでいい」
ティナの頭上から優しい声が振ってきた。
ティナは「?」と理解できないようにライトに振り返り見上げる。至近距離にあるその顔はとても穏やかであった。
ライトは上目遣いで自分を見上げるティナを数秒、見詰めたあと、ティナが飲んでいたココアを一口。
「・・・甘いな」
「ふふ。普段、飲まないものね」
少ししかめ面をするライトに小さく笑う。
その可愛いものを見るかのような笑顔に、ライトは目を細めた。
ココアを台に置き、ライトは優しくそして自然にティナの髪を指に絡めるように、上から下へ撫でる。
それを気持ちがいいとティナは目をつむる。
ライトは何回かそれをくり返す。
そして、目の前にある無垢で穢れを知らない薄桃色の唇に触れるだけの口付けをした。
「……?」
ティナは温かい感触に目をぱちりと見開く。何が起きたのか解らないと縋るようにライトを見詰めた。
ライトは穏やかに微笑み、一言。
「ココアがあまりに甘かったのでな」
半分、硬直するティナの頬をさらりと撫でる。
「……ライト兄さん…」
「なんだ」
ティナは撫でられる頬を朱色に染めた。
「…ココア、だけ?」
「……」
これは意外だと、今度はライトが少々驚く。
だが、ここは大人なものですぐに含みのある笑みを浮かべた。
「…ココアだけではない、と言ったら?」
「??…わからないわ」
「………なるほど」
ティナの「ココアだけ」というのは恋愛的な流れへ発展するものでなく、キスそのものをした理由が知りたかっただけ。
何となく心のどこかで解っていたようないなかったようなでライトは苦笑する。
「…(まぁ、バレンタインデーのお返しとやらは果たしたな)」
ティナに悟られないように内心で呟く。
ライトはいまだ不思議な表情をする愛しい少女を優しく抱き寄せたのだった。
−まだ、早いか…−
END
オボロォォォ!!!!
これの何処がホワイトデーなんだ(汗)
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