03/17の日記

23:22
パロ
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フリオニール+ティナ




何気ない日常がすぎていった放課後の校舎。


授業が終わり、生徒が清掃にとりかかる。

Dクラスも廊下や清掃担当されている場所へと移動するなど、各々掃除にとりくんでいた。


皆が掃除している中、フリオニールが内心胸を高鳴らせながら、廊下を掃くティナに視線を向けていた。



「(…気付いたら放課後になってしまった…)」



フリオニールは机の横に下げられている鞄に視線をうつす。

ティナからバレンタインチョコを貰ったフリオニールはベタなことに手作りクッキーを焼いたのだ。

人生初のお菓子作りをした恥ずかしさより、ティナに受け取ってもらえるかが心配だと心中ハラハラして結局、放課後になってしまった。




セシルと二人で楽しそうに掃除をするティナの笑顔にフリオニールは自然と顔が緩む。



「…」



はっと、自分の世界に入っていたとフリオニールは我に返る。

周囲を確認し、見られていないことに安堵すると清掃ロッカーに道具をしまいに行った。

そこへ偶然、セシルと一緒に道具をしまいにティナと遭遇する。



「セシル…ろ、廊下の掃除終わったのか?」

「?うん。フリオニールは?」

「お、終わったさ!」

「そう、それじゃぁ、帰れるね」

「ああ…、ティ、ティナもすぐ帰るのか?」

「ううん。私はちょっと用事があって、まだ残るの」

「そうか…」



どうにもクッキーの事が脳内の大半を占めているせいか、自然に振舞えていないような気がするとフリオニールは勝手に冷や汗をかく。

セシルは知らないが、ティナはフリオニールの焦りに多少不思議に感じた。



「フリオニール兄さん、どうか…したの?」

「い、いや!?」

「そう…」

「あ、いや…その、」



ティナが心配そうに顔を覗き込んでくるものだからフリオニールは半歩後ろに引いてしまった。

ティナはそれに対して少し切ない顔になる。

フリオニールは慌てて言葉を発そうとするが、瞬時に脳内で待ったをかける。



「(待て、今こんなところで言ってしまって大丈夫なのか?)」



自問自答するフリオニールを他所にセシルは温かくティナを誘導し、その場を離れる。

ティナは肩を抱き寄せられフリオニールを素通りするセシルの顔を確認した後、フリオニールへ視線を移すが…

フリオニールはセシルとティナがその場を離れたことすら気付かない様子で何かを考えていた。




「(今更、何を怖がっているんだ俺は…渡さないと意味がない!)」




昨夜、家で完成させたクッキーを目の前にした誓いと覚悟を再確認し、顔をあげる。

しかし、そこには誰もいない。

ティナに呆れられたと勘違いしてしまいフリオニールは自分の世界に入ってしまったことを後悔した。

勘違いをしたのはフリオニールだけで、むしろティナはその場から消えてしまったことに申し訳なさを感じているのだが…。


しかし、落ち込んでも居られないと気を取り直し、慌てて教室を見渡す。ふと廊下を歩いて行くティナの後ろ姿を発見。

フリオニールは席に戻り、鞄の中のプレゼントを確認して、想いを胸にティナの後を追った。





「ティナ」

「…フリオニール兄さん」

「その、どこに行くんだ?」

「ぁ、花壇の水遣りに…」

「お、俺も行っていいか?」

「……いいの?」

「もちろん。…いいか?」

「うん!」



フリオニールの申出に嬉しかったのかティナは微笑む。その天使のような笑顔にフリオニールは照れくさそうに笑い返し、ティナの隣りへ歩んだ。





二人は校舎裏に植えられた花に水遣りをする。

ゴミ捨てくらいに立ち寄るだけで、花壇があったことに気付かなかったとフリオニールはティナに言った。

ティナは花に視線を落とし微笑みながら、応える。



「…私が、先生にお願いして植えたの」

「そうだったのか…。でも、また何故?」

「淋しそうだったから…」

「え?」

「枯れた花を見て、何だか花が淋しそうだったから…」

「…ティナ」

「花、綺麗でしょう?たくさん咲くと、きっと、もっと綺麗だと思うの」

「そうだな。きっと綺麗さ」

「うん」

「それに……温かい心のティナが育てているんだ。どの花より綺麗さ」

「フリオニール兄さん……ありがとう」



自然に出た言葉とはいえフリオニールは急に恥ずかしくなってしまい、ティナから視線を逸らす。

ティナは小さく笑いながら、立ち上がり如雨露を置きに水道まで歩もうとした時だった。



上から不気味な高笑いが響き、二人は校舎を見上げる。



そこには窓から顔を覗かせる生物教師のケフカの姿。



「おほーっほっほっほ!!!!なぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜んて暑苦しいんでしょ!!!これでもくらいなさ〜い!!」



ケフカはにったり口角を吊り上げると、中から小さな植木鉢を落としたのだ。いくら小さくとも校舎三階から落とされたそれの威力は凶器であり危険だ。

それよりも、教師として生徒に対する暴力に等しい。しかしケフカはお気に入りのものを愛でるというより、虐めたくなる衝動のようで、たびたびティナに危ない悪戯をしでかしていた。



今、そんなことを考えている場合ではないとフリオニールは鞄を盾にティナを包むように片腕で抱きしめる。



「ティナ!!!!」

「っ!!!」



植木鉢は分厚い教科書が入った鞄のおかげで、跳ね返りごとんと地面に落ちる。フリオニールも鍛えていることもあって、腕に違和感を感じなかった。

間一髪のところで大事に至らなかったにしせよ、教師失格だとフリオニールは怒りの視線をケフカへと送る。


が、そこには誰もいなかった。


代わりに、ケフカがいるであろう所から悲鳴が聞こえた。




フリオニールは何だったんだと不可思議に思いながら、腕の中で小刻みに震えるティナを心配そうに見詰める。



「…ティナ。もう大丈夫だ」

「……、ごめんなさい」

「俺は大丈夫だ。ティナに怪我がなければ、いいさ」

「っ、そんな…」

「大丈夫」



自分を見上げる瞳は涙をためていた。

その顔にフリオニールは心配ないと笑ってみせる。



それよりも、鞄を盾にしてしまったことで大事な中身が大変なことになっているのではないかと嫌な予感がした。


ティナを解放してやり、フリオニールは鞄の中を確認する。


植木鉢が当たった面に、クッキーがあったようで無残にも袋の中で粉々になっていた。

フリオニールは小さく溜息を吐く。


そんなフリオニールにティナは「どうしたの?」と声をかけた。


もうクッキーのことはいいかと諦めようかと思ったが、それは自分の本心なのかとティナの顔を見詰めながら考える。



「?フリオニール兄さん?」

「…なぁ、ティナ」

「?」



フリオニールは半場、自暴自棄になっていたのかもしれない。

粉々のクッキーが入った透明な袋を鞄から取り出した。

ティナはそれを不思議に見詰める。

頬を朱色にフリオニールは笑った。



「…本当は、これを渡したかったんだ」

「…それは…?」

「昨夜、初めて作ったクッキーで、その…バレンタインのお返し…だったものだ」

「…」

「事故とはいえ、見るに耐えないものになった。もっと早くに渡すべきだったよ」


見せたところで何かなるでもないと言うのに…フリオニールは苦笑し、それを鞄にしまおうとする。

だが、ティナはそれを静止し優しくフリオニールの手から自分の手におさめた。

フリオニールは驚き、ティナを見やる。



「ティナ…」

「………ありがとう…」

「いや…その、感謝するのは俺のほうだ」

「ううん…、ありがとう…フリオニール兄さん」

「…わかった。だから…泣かないでくれ、ティナ…」



袋を大事に両手で包み込み、ティナは静かに涙していた。

フリオニールは泣かせたいわけじゃないと慰める。だが、とても嬉しかった。

それはティナも同じ。

身を挺して護ってくれた上に、あんな小さなチョコレートのために、慣れもしないお菓子を作ってくれたフリオニールの想いが流れ込んでくる。

それが、どうしようもなく嬉しい。


フリオニールは優しくティナの頭を撫でる。

指で涙をぬぐい、ティナはフリオニールを見詰める。

どうしたらこの心優しい少女は笑顔になってくれるのだろうかと、フリオニールは思考を巡らした。




「なあ、ティナ」

「…」

「花壇の水遣り…俺も一緒に来ていいか?」



フリオニールの言葉にティナは目を見開き、一滴の涙をポロっとこぼす。

そして、その後…フリオニールは今日、一番の笑顔を見ることが出来たのだった。





−結局、お返しをもらったのは俺のほう−



END




長いし、ホワイトディじゃないし、オチわからんし…

あっつくるしぃ〜←

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