03/19の日記

21:22
パロ
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セシル+ティナ




コン コン


ノックの音で、ティナは読んでいた本から視線をはずし戸に向ける。




「はい」

「僕だよ。入っていいかい?」

「セシル兄さん。どうぞ」

「入るよ」




ノック音はセシルであった。

ティナはぱっと表情を明るくさせ入室を許可する。

戸を開けて入ってきたセシルの手には紅茶とお菓子が上がったお盆。


戸を閉めてセシルは微笑む。




「一緒にどうかな?」

「喜んで」

「それは良かった」




ふわふわ絨毯の上のガラス張り折りたたみ式テーブルにお盆を置いた。

ティナはクッションを隣りに置き、座るように促す。

セシルは「ありがとう」と笑顔で応え、ティナの隣りに座る。

ティナは読みかけの本にしおりを挿み下に置くと、セシルに向き合う。




「セシル兄さん。突然どうしたの?」

「ん?ティナと時間を共有したかったんだ」

「私と?」

「うん。…僕じゃ嫌かな?」

「そんな!セシル兄さんは私で、いいの?」

「ティナだからいいんだよ」

「?ありがとう」

「さぁ、冷めないうちに飲もう」




セシルは笑顔のまま、紅茶に口をつける。

ティナはその美しく笑う兄の顔を見詰め、紅茶を一口。


花をくすぐるローズ&ハイビスカスの香りを堪能する。セシルは自分を思って砂糖を混ぜてくれたのだろうか、甘酸っぱい味がした。


それを思いティナは目をつむり、味わう。

その横でセシルは眩しそうにティナを見詰めた。



血の繋がりのない愛しい妹。兄弟たちの中にはそれで悩む者もいる。

それぞれが、それぞれの答えを見つけるために奮闘していることをセシルは知っている。


自分もまた、その一人だからだ。


しかし、自分は皆と違ってそれほど苦悩はしていなかった。

何故なら「きょうだい」という関係に徹しているからだ。

実兄ゴルベーザがいるということもあり「きょうだい」とはこうあるものと形が思い描かれているというのもある。

だから、皆のように酷く迷うこともなくティナの部屋に普通に入れる。

自分以外の兄弟たちは迷いがあるゆえにティナの部屋に近づくことを避けているように感じた。

それは「迷い」というより「邪」な気持ちがあるからだと苦笑する。


…決して口には出さないが。



あの長兄ライトや堅物な三男スコール、五男クラウドが気持ちを抑えているのを外から見ていると同情したくなる。

自分のように割り切ってしまえば、どうということはないのに…。


ふとそんな事を考えて気付かれないように溜息をつく。







セシルは気付いていなかった。

むしろ兄弟たちより目の前の少女を傷つけたくないばかりに避けているということを。




「ねえ、セシル兄さん」

「なんだいティナ」

「この前、ね」

「?」

「ライト兄さんから、その…」

「…ライトがどうしたんだい?」

「私にも、よく解らなかったんだけれど…」

「うん」

「……その」




口ごもるティナの頬がだんだんと朱色になるのを見て、セシルは何故か心がざわついた。

急かさず、ティナが口を開くまでセシルは待った。

ティナは自分でも解らないと熱くなる頬を両手で覆いながら、セシルを見詰める。




「…………キス、だったのかしら…」




疑問系で返されてもどうしようもない。

今初めて知らされた事実にセシルは「そうなんだ」と思うしかなかった。

それよりも先ほどから慌ただしく昂る心のほうが、セシルを混乱させていた。


微妙に空気が変わったとティナはセシルを無意識に探る。




「…どうしたの?セシル兄さん」

「いや、なんでもないよ」

「…本当に?」

「………うん」




−嘘−

思慮深いほうだと自負しているセシルは気付いてしまった。

ライトに嫉妬しているのだと。

そして、無意識に奥深くしまい込んでいた感情が湧き上がってしまった。


自分の心の内の闇の部分が顔を見せたと、落胆する。

しかし、どこかで安堵する自分もいた。


心配して見詰めてくる少女を目の前にして、自分は何をしているんだとプライドが働き、笑顔をつくる。




「大丈夫だよティナ」

「……セシル兄さん。無理してる」

「どうして、そう思うの?」

「思う、というより…感じるの」

「……ティナはすごいな」

「すごい、かしら?」

「うん…。すごいよ」




セシルは苦笑気味に言う。

本能的に感じ取るティナに自分も驚かされてきたが、兄弟たちが何故ティナを「想う」のかようやく理解できたと感じた。

話を逸らすようにセシルはポケットから可愛く包装された包みを取り出し、テーブルに置く。




「実は、ティナにこれをあげたかったんだ」

「……これは?」

「バレンタインのお返しだよ」

「セシル兄さん…」

「あけてごらん」

「…ぅ、うん」




ティナは戸惑いながら、そっと手に取り中を取り出す。

包みから取り出されそれは以前セシルが買ってくれたシュシュ。

そのシュシュの色は現在、身につけている白銀でなく真紅色。




「これ…」

「ティナの綺麗な金髪が栄えると思ってね…」

「とても、綺麗…」

「気に入ってくれたかな?」

「うん。ありがとうセシル兄さん」

「…良かった」




−本当に良かった−

真紅のシュシュを大事に包むティナを見て、セシルは生まれてくる感情に苦笑する。




「(ああ。僕は無意識にこの子の魅力を引き出そうとしていたんだ…)」




兄弟たちを哀れに思っていた自分を恥じた。

自分こそ、ティナを強く想う一人であったと…。

その「想い」はきょうだいとしてでなく、一人の人間を「想う」もの。



無性に目の前の可憐な少女を腕にしまい込んでしまいたくなった。





「…セシル兄さん?」

「ごめんね。もう少し、このままで…」

「うん」

「ティナ…」

「はい」




セシルは両腕に抱く少女の美しい金髪に頬を摺り寄せる。




「僕は君が、大好きだよ」




身を寄せてくるティナをさらに強く、だが優しく抱きしめたのだった。




−この想いこそ、本物なんだね−


END



いい加減にホワイトディらしいの書けないのだろうか(涙)

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