03/22の日記

23:11
パロ
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スコール+ティナ





一人の時間を好むスコールはよく外出する。

それを止める者はいない。

皆が集まる食事時には帰ってくるからだ。

中には何処に行くのか気になる、と聞いてくる者がいる。

別に特別な場所があるわけではないので、軽く受け流していた。





兄弟たちのことなど気にせず、今日もスコールは外出するため、支度をする。

至ってシンプルかつラフな格好で、片手に一冊の文庫。


玄関に下りて、靴を履き無言で外に出ようとした。




「スコール」




そのまま無視、もしくは聞こえなかった事にして出れたのだが…何せ自分の名前を呼ぶ人物が彼女だから反応してしまう。

表向きは面倒くさそうにして声の主に振り返る。


薄でのカーディガンを羽織ったワンピース姿の可憐な少女。




「…なんだティナ」

「また、何処かに行くの?」

「ああ。」

「そう…」

「(だから、何だ)…用がないなら俺は行く」

「……引き止めてしまって、ごめんなさい」

「(…その間はなんだ?)…どうした?」




スコールは強制的に終わらせて行こうとしない自分に腹を立てる。

だが、目の前にいる少女を放っておこうとも思わない。


ティナが何かあるのは明白だった。

他人がすることにいちいち干渉してこない彼女が、こうして声をかけてくるのだから。

スコールは半開きのドアを閉めて、ティナに近づきその顔を覗き込む。




「言わないと解らない」

「…あの、ね」

「だから何だ」

「…私も、一緒に行って、いいかな?」

「………(何だと?)」




俯いて、もじもじとしていたティナの申し出にスコールは黙る。

ただ単に驚いているだけなのだが。

その沈黙がティナにとって、どれだけ不安を煽ることか…。


スコールは縋るような顔をして見詰めてくるティナを見返す。

黙っている時間など数秒であるが、ティナにとって不安なことこの上ないであろうと、スコールは他人事のように考えていた。




「…ダメ、かしら…」




ティナの顔が本格的に曇ったと感じ、スコールは口を開く。




「お前が思っているような所じゃないぞ。それでもいいのか?」




スコールの言葉にティナは顔をあげ、小さく頷いた。

その頷きを「いいよ」ととらえたスコールは今度こそドアを開ける。



「…行くぞ」

「うん!」



ティナはその後ろ姿を追うように、外履きに履き替えた。


先に出たように見えるようで、スコールはティナが出るまでドアを開けておいてくれた。

そのさり気ない優しさにティナは微笑む。



「ありがとう」

「…」



スコールはティナの微笑みを無言で見下ろした後、その小さな手を包んだ。

手を握られたティナは歩き出すスコールの背を見詰める。





住宅街を抜け、商店街をも出てしまう。


スコールの目的地などわからない。

だが、手を握って歩いてくれるスコールにティナは何の心配もしていなかった。いや、心配という気持ちも生まれていないのだ。

言葉で語ることが少ないスコールは誤解されやすいと思うだろう。しかし、感じ取ることのほうが多いティナにとって、スコールの存在はとても落ち着くものだった。

スコールにとってもティナという存在は自分を包み込んでくれるので安堵感を覚える。





歩き続けてたどり着いた場所は河川敷。



周りから見た二人は恋人かと思わせるほど穏やかな雰囲気であった。


スコールはティナの手を引きながら、坂をおりる。


ちょうどいい傾斜に二人は腰をおろした。

スコールは持ってきた文庫を開き、読み始める。

ティナはそれを確認すると微笑み、日光で輝く川を眺めた。






一体、どれくらいの時間が流れたのだろうか…



全く、二人の間に会話がない。

ここにバッツやジタン、ティーダがいたら息苦しくて騒いでいるだろう。

この二人だから理解し合えるものがあるのだ。



だが、互いにそう思っているだけで本当なのか確証はない。



文庫を読むスコールは隣で景色を眺めるティナを横目で盗み見る。

その美しい横顔に一瞬、見惚れた。

…がスコールは再び文庫に目を落とし、口を開く。




「……本当は、退屈なんじゃないのか…?」

「え?」

「帰りたいんじゃ、ないのか?」

「…どうして、そう思うの?」

「(どうして、だと?それは俺なんかと…)何となくだ」

「…スコール。私、退屈なんかじゃないわ」

「本当か?」

「どうして嘘をつく必要があるの…?」

「……さぁ、なんでだろうな」

「ふふ。…スコール、何を心配しているの…?」

「心配?(俺が?なに対して?)」

「今のスコール…とても悲しい顔してる」

「……(そんな、顔してるのか?)」




互いの表情など見ていないのに何故そんなことを言ってくるのだと思いスコールはティナに振り向く。

ティナはすでにスコールを見詰めていた。

慈愛をこめたティナの瞳に、スコールは目が離せない。

しかし、ティナのその瞳にスコールは酷く安心し確信した。




「…」

「…スコール。あのね…私のほうが、本当は怖いのかも、しれない」

「…」

「私、スコールの側にいても…大丈夫かな?」

「(それは、俺の台詞だ…)今更、何を言うんだ」

「……そうだね」

「ティナ。」

「ん…?」



スコールは文庫を閉じて、体ごとティナに向き直る。

そして、今度はスコールがティナを見詰めた。


ティナはスコールの瞳の奥に浮かぶ優しさに、微笑む。

日に照らされ輝くティナの笑顔を眩しく感じるが、スコールはつられて自分も笑っていることに気付かなかった。


気付いていないスコールの小さな微笑みにティナは嬉しさがこみ上げる。




「…また、一緒に来てくれるか…?」




スコールの真剣な、それでいて本音を聞けたティナは微笑みながらゆっくり頷いた。




−共に時間を過ごすのも悪くない−

END



…あの、切腹します

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