03/31の日記

19:53
過保護な愛情2
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☆矢の夢妄想小話。名前変換不可。







ムウが守護する白羊宮へと運び込まれたルージュはすぐ治療へとうつる。


カノンは外に出された。

ムウは弟子の貴鬼にお茶をだすようにと言い残し、部屋へ消える。



「ムウ様…こんな時に、お茶だなんて…」



ぽつりと呟いた貴鬼の言葉にカノンも同感する。

だが、ルージュの容態が気になってしまい落ち着こうとお茶を一気に飲み干した。




1時間ほど経過した頃、市街騒動の鎮圧を任せたカミュ、子どもの避難に行ったアフロディーテ、今回の騒動を引き起こした首謀者追跡に向わせたシュラとミロが戻ってきた。


全員が顔を合わせたところで、部屋からムウが出てくる。




カ「ムウ」

カノ「ルージュ様の容態は…」

ム「心配はいりません。弾丸も取り出しましたし、止血はカミュの凍気によって殆ど止められていましたからね」

ミ「では…お命に関らないのだな」

ム「ええ。ですが、いかに偉大なお方でも体は弱っています。このまま安静に2,3日様子を見る必要があります」

ア「なんということだ…ルージュ様のお体に傷が出来るなんて…」

シ「……。そうなると、無理に教皇の間にお運びするのは体に毒だな」

カ「うむ。」

カノ「ムウ、いいのか?」

ム「私は構いませんよ。ただ……何処かの過保護な恩師が通いつめるだけですから」

ミ「…教皇シオンか…」

カ「ミロ。口に出すな」



カミュの冷静なツッコミに一同シンクロする。

ルージュが眠る部屋に何度も視線を送るカノンにムウは声をかけた。




ム「……ルージュ様にお会いしますか?」




5人は黙って頷く。

ムウはふっと口元を緩めると、入室を促す。


5人が目にしたのは安らかに眠るルージュの姿。

応急処置なのだろう撃たれたところには何枚ものガーゼを下地にして包帯をひと巻きしているだけだ。

撃たれた腹部の衣服はムウが箇所だけ切ったのだろう、雪のような白い肌が覗いている。

不謹慎だと罪悪感を覚えながらも、滅多に目にすることがないルージュの素肌に5人は揺れた。


その様子をムウは冷ややかかつ楽しそうに小さく笑う。




「…今のうちに堪能することです。今夜にでも、過保護さまが来ますゆえ…」


「「「「「!!!」」」」」



ムウは静かに部屋を後にする。

残された5人はというと…


静かに眠るルージュの側により、撃たれた患部を苦々しく凝視していた。


ミロがぽつりと口を開く



ミ「…シュラと犯人を追っている時、ルージュ様は我々に小宇宙で語りかけた」

カ「なに?」

シ「ああ。あの時、俺達は湧き上がる怒りに自分を見失っていた」

ミ「そんな俺達にルージュ様は憎悪の心で挑んではいけないと…」

シ「さぞ苦しかったはずのルージュ様が、離れた俺達を案じてくれたのだ」

ア「ルージュ様。二人にまで…なんとお優しい方なのだ」

カノ「二人にまで?」

ア「私も、子どもを避難させる途中に語りかけられたのだ」

カ「ミロ、シュラだけでなくアフロディーテにもか…」

ア「カミュ君にも?」

カ「うむ。"市街の人々の安全を第一"…そして、私自らのお命さえも心配なさってくれた」



4人の会話にカノンは再度ルージュを見詰める。

4人よりも前に出たカノンは側にあった椅子に座り、ルージュの手を握った。


握った手は白く細い、体温が低いのかそれとも体力低下が関係しているのか、温かいと感じなかった。




しんみりとした雰囲気に身を委ねていた4人だった。


が、突如感じる胸騒ぎと小宇宙に冷や汗をかく。



ア「…こ、この強大な小宇宙は…」

シ「なんと攻撃的小宇宙なんだ…!」

カ「うむ。射竦めるような…なんと恐ろしい」

ミ「向ってくる…!!!」

カノ「…まずいな」



4人の悪寒は正しく、白羊宮に魔王…でなく、若い体を誇示している聖域の教皇が舞い降りた。





ム「おや、恩師シオン。どうしたのですか?まだ執務中でございましょう」

「ムウよ。白を切るつもりか?わかっているのだぞ」

ム「…ご心配なさるのは解りますが、執務を終えてからでも宜しいのでは?貴方様は教皇なのですよ。お言葉ですが、私事を持ち込むとは何事ですか」

「……」




落ち着きはらって貴鬼に出させたお茶をすするムウ。

もっともな事を言われたシオンは少し押し黙る。

シオンの後ろには補佐官のサガとアイオロスが苦笑していた。




サ「ムウよ。ルージュ様は大丈夫なのか?」

ム「ええ。大事には至りませんでした」

ロ「そうか。命に別状ないのなら何よりだな」

「何を言うか…!ルージュの体に傷がついたのだぞ!!!!」

ム「…いい加減にしてください恩師シオン。前聖戦をかけた貴方様ならルージュ様をわかったおられるでしょう。…失礼ですが、聖闘士になるための修行ですでにいくつも傷があると思いますが?」

「うるさい」

「「「(はぁ…)」」」




全くルージュのことになると子どものような反応と思考になる教皇に溜息をつく。

三人に呆れられていることに気付かないシオンは3人を無視し、ルージュが療養する部屋の戸を開けた。




「小僧ども…」

「「「「「…!!!!」」」」」




シオンの姿を見たときの4人は血の気が引くのを感じる。


ムウとサガ、アイオロスはシオンの後ろから現れた。




ム「シオン。ちゃぶ台返しはやめてください。ルージュ様がいるのですよ」

「…そのようなことはせぬ」

ロ「今の間が気になるな」

サ「…胃が痛い」

ロ「サガ大丈夫か?」



アホらしいやり取りはあるものの、三人の登場に4人は処罰を覚悟していた。

カノンはルージュから手を離し、シオンの前に出る。




カノ「罰するなら、このカノンが全て受けます」

「「「カノン!!?」」」

サ「カノン…お前」

カノ「油断大敵とはこのこと…ルージュ様の元を片時も離れなければ、こんな事にはならなかった」

シ「カノン。なにも貴方だけが罰を受けることはない。それなば、このシュラも」

カ「うむ。カノンだけが受けるものではない。連帯責任だ」

ミ「そうだぞカノン」

ア「教皇シオン。そういうことです…我々の処断をお申し付けください」

ロ「お前たち…」

ム「…恩師シオン。どうされるのですか?」

「………」



全員がシオンに向き直り、言葉を待つ。

シオンは無言で全員の顔を見やった。




「…4人には」



真剣な表情でシオンが口を開く。声色と雰囲気に緊張が走ったとき




「…処罰はありません…」

『!!!?』



かすれた声が小さく響き、全員が振り返る。

ルージュが目を覚まし、弱弱しく微笑んでいた。


シオンは4人を押しのけると膝を着きルージュの手を握る。

皆が知る威厳ある教皇シオンの姿でなく、焦燥感に慌ただしい姿を唖然と見つめていた。

一人、ムウだけは溜息だったが。




「ルージュ!」

「…シオン。すみません」

「何を言うと思えば…」

「……責めてはいけません」

「…」

「私自身が…招いたことなのです」

「だが…4人は護衛を兼ねてつけたのだ」

「……シオン」




心配していると解っているからこそルージュはシオンに微笑む。

シオンもルージュが無事であると解った時点で、4人の処罰など考えていなかった。

カノン達の悲痛な申し出だが、それを望む4人を思うと示しがつかない。


シオンの心情を察し、ルージュは手を解きシオンの頬を撫でた。




「…シオン。あなたの、本当の心が聞きたい」

「……お前には適わないな」

「…ふふ」

「お前が無事なら、なんでもいいのだ」


サ「教皇シオン。それでは…」

「聞け小僧ども…お前たちのお咎めはない」

ロ「教皇シオン…」

「だが、このような事は金輪際、許さん。わかっているな」

カノ「…わかっています」

カ「承知しました」

ア「失敗はしない」

シ「この命に誓って」

ミ「お護りいたします」



シオンの言葉に4人は改め誓う。

その様子にルージュは苦笑に似た微笑みをした。

後ろでムウが目をつむりふっと笑うとルージュに視線を送る。

ルージュはムウの視線を受け取り、瞬きで頷いた。




ム「さぁ、怪我人がいるのです。そろそろお引取りください」




ムウの言葉に教皇シオン以外の者が、ぞろぞろと退室する。

中には退室前にルージュへ言葉をかけていく者もいた。


すっきりとした部屋にムウとシオン、ルージュだけになる。

180cm以上もある大男が何人もいると酸素が薄く、何ともむさ苦しくて仕方がないと、ムウは悪態つきながら、それでいてシオンにこの場を譲るように出て行った。


ムウの気遣いにシオンは"全く出来た弟子だ"と苦笑する。




「ルージュ。具合はどうだ」

「大丈夫ですよ。ムウの処置のおかげです」

「そうか…」

「心配をかけました」

「…もうこのような事は止めてくれ」

「それは、わかりませんよ…」

「…そうであったな」



シオンは側にある椅子に腰掛ける。

包帯が巻かれた患部にそっと手をかざす。

その時のシオンから大きな悲しみを感じ、ルージュはシオンの手に自分の手を重ねた。




「当分の間、ここへ来てよいか?」

「……ええ」

「ムウには仕事をしろと言われるであろうな」

「…ええ」

「だが、それでも私は来るぞ」

「待っています」



いつの間にか、重ねていたはずの手を強く握られていた。




END



うーんギャグ?

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