06/16の日記

13:22
ありきたりPart2(笑)
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DBZ夢小話。名前変換不可。苦手な方は回れ右です。








昼休み



紫義は堅苦しい背広の上を脱ぎ、カーディガンを羽織った格好で廊下を歩いていた。ぱっと見、生徒である。

廊下ですれ違う生徒に声をかけられたり、好奇な視線を送られるが紫義は全く気にせず、在学中よく世話になった思い出の場所へ向かっていた。



(ひっさしぶりだなぁ〜)



なんて高揚した気分。例えるならルンルンしている。



サイヤ高校は3棟に別れている。1、2棟は教室や教務室、体育館などあり、3棟は資料室が殆どで、部活動や会議のために使用する空き教室で成っている。


今、紫義が向かっている場所は3棟。ゆいいつ屋上の開放を許されている棟なのだ。




階段をあがり、昼飯の手作り弁当を片手に扉を開く。


湿った暗い空間が一気に真っ白になって視界を惑わす。




「くぁ〜〜〜っ」




紫義は鉄格子まで歩み、思いっきり伸びをして太陽を浴びる。雲一つない晴天の下、紫義は目をつむり顔を上げた。



「ん〜、此処は変わらないなぁ」



鉄格子に両肘を乗せ独り言を呟く。心地好いポカポカの太陽とそよ風を受けながら、まるで学生時代に戻ったようだと感傷に浸る。



一部始終を見られているとも知らずに……





「…プッ……」


「…?」


「センセー、やっぱ可愛いなァ」




声のしたほうへ紫義は振り向く。

出入口の上。コンクリートにそいつはいた。




「……あれ?」


「生徒の顔は覚えよーぜ?」

「…えーと、ターレス?」

「よく出来ました」

「お前さんもここで飯なのか?」

「俺だけじゃねーよ。もう二人いる。一人は購買だがな…」

「そか。ねぇ、俺もそこいい?」


「…は?」




ターレスはこちらを指さし、下から見上げてくる新米教師をじっと見詰めた。

見た目は華奢で女のような物腰柔らかそう。しかし、どこか女と欠けている。だからと言って男うんぬんと言えない。

こんな事を考えているあたりで、既に惹かれているなんてターレスは気づいていない。



紫義はターレスの視線など気に留めず、片手をターレスに差し出す。



「…なんだよ」

「ほら、手」

「…」




ターレスは逞しくゴツゴツした手を差し出す。それをぎゅっと握り、壁に足をかけて跳躍する。

ターレスが力強く引っ張ってくれたおかげで軽々と上がることができた。


紫義は、あぐらをかいたターレスの目の前に座り一言お礼をいう。紫義の笑顔を軽く返したターレスだったが、握った手の感触と身軽さにどうにもアテられたようで、不思議な感覚に捕われ始める。


自分の手を閉じたり開いたりしているターレスに気づかず、紫義はもう一人の人物に目を見開いた。



「あ、と……か、か、カカロット?」

「…」


「へぇ、ここたまり場なのか?」

「…」

「イイ場所だよなぁ」

「…」



両手を枕に仰向けで目をつむっているカカロットに話しかける紫義。相手が寝ている寝ていない関係なく話しかけているあたり抜けている。



「…センセーよ。会話になってないぜ」

「ん?そうだな」

「……」



あぐらをかいたターレスの片足を跨ぐように身を乗り出している紫義は顔だけターレスに向けて笑っている。

ターレスは自分でも可笑しいと思いながら四つん這いの紫義に悪戯をしたくなった。

そろりと紫義の体に触れようとした時だった。




「へぇ…そーゆー趣味あんのか」


「!」

「お?」



寝ていたのかも解らないカカロットが突然、口を開いたのだ。そして、ゆっくり瞼を持ち上げターレスを冷めた瞳で見据える。

別にたいした悪戯でもなかろうにターレスはカカロットの言葉にひやりと感じ手を引く。


二人の間に微妙な雰囲気を発生させた張本人は二人の斜め間にちょこんと座り、弁当を開いている。



「お前ら、飯食ったの?」



呑気すぎる。

二人は自然に紫義へと視線をうつしていた。

弁当の卵焼きを頬張りながら、クリッとした瞳を左右に移動し二人を見る。



「まだなら、早くしないと昼休み終わっちゃうぞ」


「「……」」



この二人にとって購買に行っているクリリンをいれ、三人の空間が自然にできていた。仲がいいという訳ではない。だが、三人だから通じるものがあって、昼休みだけでなく三人でいることが当たり前だった。

紫義にたいしてわだかまりはある、だが気づいたときには溶け込んでいる。半無理矢理な部分もあったはずなのに、流されるように入っている。二人は不思議でならなかった。


二人の視線を受けながら黙々と弁当を食らっていく。育ちの良さを感じさせる綺麗な食べ方だった。



「そーいやぁ、もう一人は?あと10分しかない」


「…」

「…購買紛争でもしてるんじゃねーの」

「あ〜、なるほど、ね」

「…」



紫義はターレスの言葉に箸を口元に持って行き視線を明後日に向ける。
在学中を思い返せば確かにここの購買はやたらと混雑していた。育ち盛りのムサイ野郎しかいないのだ、食べる量だって半端ではない。









「はぁ〜〜」


「んぅ?」

「よぉクリリン。今日も飯抜きかぁ?」

「うるせーよぅターレス」

「くくっ」

「フッ、災難だなクリリン」

「カカロットまで…」



会話からすると一度や二度の話しではないようだ。
紫義は箸を持ったまま、ひょっこり下にいるクリリンを見遣る。


クリリンは驚いて変に背筋を伸ばした。



「あわわ、先生じゃないっすか!!」

「ども。そんな堅くならないでさ。飯、ないんだろ?」

「え?あ、はい…」

「おいでよ。俺の食いな」

「はい、って、ええ!!?」

「ほら、早く早く」

「は、はい」



クリリンはひょいと身軽な動作で、上がって紫義の前に座る。

紫義は弁当をクリリンの前に差し出す。箸を揃えて少し困った顔を向ける。



「予備の箸…ないんだ。俺のでいい?」

「え、あ、かか構いません」

「そか、はい」



紫義はぱっと笑い弁当の上に箸を置いた。

あまりの事の早さに両サイドの男は唖然とする。もちろんクリリンもそうだが…。


紫義は両サイドに視線を向ける。


「?…お前らも食いたいのか?今度、な」

「「……」」


いや全く違うのだが。どうにも調子が狂う。
紫義はクリリンに早く食べろと催促し、クリリンも遠慮しながらしかし飯にありつけたと安堵し食べはじめる。





弁当の中身は半分しかなかったが、クリリンは満足していた。

昼休み終り数分前になり、紫義は弁当を片してぴょんと下へ降りた。




「よっ、じゃ授業に遅れないよーにね」



何事もなかったように立ち去ろうとする紫義に、たまり兼ねたカカロットが声をかけた。

ターレスとクリリンはカカロットの行動に驚かされること二度目である。




「あんた、何がしたいんだ?」

「?変な質問するんだな」


紫義は上目遣いでカカロットと、ターレス、クリリンを見遣ると笑った。



「皆で食うと美味いし…ほら飯食わないと、やる気、でないだろ?」

「…なんだそれ」

「………」


ターレスは鼻で笑っているが、紫義に興味津々なことは見てわかる。

カカロットは紫義が屋上を去った出入口をじっと物珍しそうに見詰めていたのだった。

そして後ろから、赤面してボソッと



「…すごい美味かった…」




と、クリリンの小さな声がチャイムとともに掻き消された。




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うわぁ……。

なぁんだこれえ…

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