09/19の日記

23:35
DB3
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静寂に包まれた室内。

一人残されたチチは悟空がもたらした不安をかたどる様に唇に触れる。



「…煙草…いい匂い…」



今更なんだと言うのだ。こんな醜い感情、結婚していくども体感したではないか。夫は超がつく天然で世間知らずな上に感情表出が乏しいのだ。何をされたか、何があったのか、全く気にしていないだろうし、感じてもいないだろうに。何を動揺している。自分の中で、呆れのような仕方ないと諦めていたじゃないのか?

10年連れ添っている。共にすごした時間は短いものかもしれないが、それでも夫はこんな矮小な自分のもとに帰ってきてくれるじゃないか。今はセルという人造人間との地球存亡をかけた戦いを前にしている。帰ってこれるかわからない命と比べれば、こんな事……初めから比べるまでもないのだ。



「…情けねぇだ…」



夫が帰ってきたら、何事もなく笑っていよう。

だから、この気持ちが消えるまで涙よ流れておくれ。









チチに薪割りを頼まれた悟空はカプセルハウスのてっぺんに腰を下ろしていた。






自分が腰を下ろしている、その真下で静かに泣く妻の気を感じる。

薪割りなどしている場合ではない。

何故、いつものようにすり寄っていかなかったのか。

自分が原因なのは確かなのに、笑って"すまねぇ"と言い続け、妻に怒られる。怒って全てを吐き出して、もう一度"すまねぇ"と笑い抱きしめる。

二人だけの落ち着き方をしたい。

早く、早く、この胸のざわつきを消したいんだ。






悟空はドアの前へと降り立つ。

意を決してドアノブに手をかけ開けようとしたときだった。


"みゃ〜"


「…?」



緊張感に似合わないか細い泣き声。

足元を見れば、怪我をした子猫が悟空の目に飛び込んできた。

拍子抜けしてしまった悟空は片手で子猫を抱きかかえ、今度こそドアを開ける。




「ち、チチ〜」



小さく伺うような情けない声だった。



「おかえり。悟空さ」


「……あ、ああ。たでぇま」

「どうしただ、その子猫」

「へ?えっと、そこで見つけてよ。こいつ怪我してるみてーなんだ」

「あんれぇ、そりゃ大変だべ手当てせねばな…かしてけろ」

「…おう」



けろっとしているチチの姿に悟空は幻だったのかと思ってしまう。チチが気にしていないなら、それに越したことはないと悟空は何も聞かなかった。



それから子猫の手当てして、チチは変わらず大食漢な悟空の飯を大量につくり、可愛い子猫つきの普通に食卓をかわした。





本当に幻かと思っていたが、そうではなかった。



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