09/21の日記
23:36
DB5
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悟空は静かに立ち上がる。
じゃれている一人と一匹に近づき、ひょいとチチから子猫を取り上げ、すっと隣へ座る。猫を取り上げられた上に、真剣な翡翠の瞳で見てくるものだからチチは身構えた。悟空は猫を絨毯の上へおろし、チチに体ごと向き直る。
真剣な瞳をする翡翠色から逸らせなかった。だが、その真剣な瞳から温かさを感じる。
「…悟空さ?」
「チチ。おめぇ、すげぇんだな」
「…?何がだべ」
「オラはダメだ。耐えらんねーよ」
「だから、何がだべ」
「猫だろうと許せねぇんだ。」
「……」
「気持ち悪ぃ…こんな気持ち、何度も味わってたんか…おめぇ すげぇや」
「…何 言ってんだべ」
「オラはさ、この通りちっと心が足んねーから 気付かねぇ」
「悟空さっ」
「それなんによ オラ おめぇの事になると自分が解らなくなっちまうんだ」
「…勝手だなや」
「ああ 勝手だよな。なぁ チチ」
「………やめるだ」
「すまねぇ」
「…言うでねぇ バカ」
「うん。本当 すまねかった…」
悟空はチチ自身、気付いていない珠のような涙を親指で優しくぬぐう。
足元でじゃれている猫を再び抱き上げると、軽くキスをした。
「…チチのちゅーは返ぇしてもらうぞ」
"みゅ〜"
「悟空さ…」
「チチ」
猫を膝におろして、チチに向き直る。
チチは思う。
決して自分だけが苦しいのではないのだと。普段、感じない感覚にこんなに振り回されるほど、夫はヒトとして傷つきやすさを持っていたのだと。
そして、自分と同じところへ堕ちたのだと。
「なぁ チチ」
「なんだべ?」
「なんでオラが帰ぇってから、自分の口になんもしなかったと思う」
「…おらが知るわけねーべ」
「だよな。オラも今 気がついた」
「…」
「オラにとっちゃ なんでもねーんだよ」
「おらは そうは思えなかっただよ」
「ああ 解ってる。」
「…………でも、おらが悟空さの立場だったら…きっと悟空さと同じだべ」
「そっか」
「んだ」
いまだ流れる美しい涙を指ではなく、舌で舐めとる。舐め上げられ反射で目を閉じたチチが目を開く先の翡翠の瞳は意志を秘めていた。
「オラの全部 チチのもんだ」
「…悟空さ。超化すっと 饒舌だな」
「そっかぁ?」
「んだ」
「なぁ チチ」
「ん?」
「…キス していっか?」
「・・・・」
返事の変わりに目を閉じる。
嬉しそうにゆっくりと合わせた。
二人にしかわからない"甘味(アマミ)"だ。
身が滅ぶかと思ったお目覚めのキスは 二人の絆をより強め 二人の愛をさらに確実なものへと変化させたのだった。
END
切腹します。
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