12/07の日記
12:50
無題
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悟チチ
ブルマと悟空は、「友情」という言葉で終わるには疑問で、だからといって「恋愛」といえる甘美なものではない絆の関係に、今更ながらモヤモヤする。
元を辿れば彼女がいたから彼に会えたし、今の自分がいて、今の生活がある。それはすごく感謝している。
感謝しているのに…どうしようもなく、二人の絆に嫉妬してしまう。
入り込めないことはわかっている。というか、入り込もうなんて端から思っていないが…。
自分と悟空の関係だって、二人の「絆」と違う深いものだ。と思っている。でも、それでも割り切れなくてこうして煮え切らない想いが沸騰するのは、彼が好きすぎるあまりの我儘だ。
一生かかっても、いや死んでも、この胸のわだかまりが消えることはないだろう。
すでに、隣でぐっすり夢の中な旦那様を見つめながら、チチは溜息を吐いた。
悟空にとってブルマは仲間以外の何者でもない。クリリンとてそうだ。
ただ男か女かの違いでこんなに苛むなんてアホらしいとチチは再度溜息をつく。
「あぁ〜あ…おらにも、異性の親友がいれば、ちっとはわかるんだかなぁ」
夢の中にいる夫の頬に一つキスをして、チチは自嘲しながら背を向けた。
考えたって自分がどんどん嫌な人間になる。悟空に「またか」といった反応をされるのはもっと嫌だ。
チチは深呼吸をして、最後と言わんばかりに溜息を吐き、目を閉じる。
「……おめぇ、それ本気でいってんのか?」
「っ!!??」
びくりと体が跳ねた。
本当に驚いた。寝ているものだとばかり思っていたから。
チチは落ち着かない動悸を悟られないように、ゆっくり悟空へ振り返った。
「…お、起きてただか?」
「・・・・・」
「…っ?」
なんて、真剣な瞳なんだ。
穢れを知らない無垢な瞳が、ふつふつと煮えすぎた赤黒い溶岩のように淀んでいる。
見つめられているこっちが火傷してしまいそうで、思わず目を逸らした。
「なぁ、今の本気で言ったんか?」
「…え?」
「異性のって…やつだよ」
「え…あ、ああ…んだ。それがどうしただ…?」
「ふぅ〜ん…」
本当にどうしたというのだ。
何か変なことを言っただろうか?だいたい自分よりも信頼できるたくさんの仲間がいるのだ。あんな言葉、どうでもないだろうに…。
それに自分でも忘れてしまうほど、ぽっと言った言葉なのだ。
何故こんなにも執着してくる。
しかも、どこか怒りを纏っている雰囲気に居たたまれなくなって、また背を向けてしまった。
背を向けたことで、美しい黒髪は流れ、白いうなじや背中が晒される。
それがいけなかった。
怯えたように背を向けたチチに、悟空は片腕で上体を支えながら近づく。
「なぁ・・・なんで?」
「……っ」
耳元で囁かれてチチは息を潜めるが、体は正直に反応してしまう。
「チチ。答えろよ」
今度は白く細い肩をぐっと掴まれて、ベッドに沈まされると悟空が覆いかぶさってきた。
抵抗しようと、逞しい腕や胸に手を合わせて押し返そうとするが、当然かなわない。
「チチ。」
「…ゃ、ごくぅさ…?」
「オラだけを信じてろ。」
「………ぇ」
「オラだけを見てればいい」
「ごっ、ぅ…んぅ」
返事は深い口付けによってかき消されてしまった。
深く、深くなっていく口付けは、脳天に電流が走り抜けるほどの快楽を生ませて、何も考えられなくなる。
まるで、先ほどチチが言った言葉を忘れさせるように、考えさせないように、反撃させまいとばかりに深く。
結局、強引に体を開かれたチチは、悟空の意図するものを知ることが出来なかった。
----…
一番鳥が鳴く早朝。
チチより早く目が覚めた悟空は、隣で気絶に近い眠りをする妻の髪や頬を優しく撫でていた。
「チチ…」
昨夜の強行で、自分自身の妻に対する激情をまざまざと見せ付けられる。申し訳なさだって感じているのに、昨夜ぽつりと呟いた妻の言葉に一気に覚醒して、言いようのない焦燥感が駆け上がったのだ。
妻が自分以外の男と親しくなる?
考えただけでおかしくなりそうだ。むしろ、その男を殺してしまうだろう。
自分以外の男を頼るなんて、自分以外の男に泣きつくなんて…
例え、それがただの「友情」であっても
絶対に許さない。
なんて身勝手なんだということは、わかっている。
妻が自分以外の男を好きになることなんてないと、わかっている。
それでも、焦燥感という中に詰められた不安要素が頭をもたげるのだ。
自分が妻にしてきたことなど、片手に数えるくらいのものだ。そんな自分に妻が不安で不満なことだって知っている。自分の性格が難儀なもので、なかなか解消できないことだってある。
恐いのだ。
妻が自分しか縋る存在がないことを失うのが。
自分以外に頼れる相手を見つけてしまったら、自分は生きてはいけない。それこそ、存在がないに等しくなる。
だから、繋ぎとめておくのに、妻には自分しかいないと思わせていなければならない。
妻はそれで何度も苦悩して、何度も泣いていた。
自分の我儘に本当に悪いと思っている。
なのに、妻が自分を見捨てるんじゃないかと考えたら…。
妻に自由を与えない自分ができることは、自分にも妻しかいないのだと、全てを使って伝えることだ。
もとより、自分には妻しかいないし、妻しか見えていないのだが…。
「チチ。心配ぇすんなよ…」
妻が、時折ブルマやクリリンといった仲間への絆に嫉妬することは知っていた。そのときほど、自分しかいないのだと優越感に浸れるのと同時に、恐ろしい不安がこみ上げてくる。
妻が心配するほどのものじゃない。まして、自分にとって仲間と妻との「絆」は比べるものじゃない。全くの別なのだ。
そんなものより、自分にとっては妻の一番になれないことのほうが、重大な問題である。
「…オラにはおめぇしかいねぇんだ」
今度は優しく、唇に触れた。
END
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