03/13の日記
22:37
パロ/WD
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悟(カカ)チチ
3月14日はホワイトデー、らしい。
自分が寝転ぶソファの後ろから昼飯の準備をしている妻の鼻歌で思い出した。
一ヶ月ほど前、妻のチチから大量の甘いお菓子を投げつけられた。この前のあれは、バレンタインデーを知らなかった自分が悪かった。本当に申し訳なかったと思っている。まぁ、その後は甘い菓子以上に甘い時間をすごしたのだが・・・今日はこの前の逆らしい。
自分はお菓子をつくるなど出来ないし、金もないから何も買えない。
そうだ、花でも摘んできてやろうか?いや待て、それはしょっちゅうしてるな・・・。じゃぁ、今から寝室に妻をつれこむか?・・・飯抜きにされるな。
「チチ〜」
自分の頭ではわからない。
情けないが、本人に希望を聞いたほうが下手なことにならない。
可愛らしい大きな黒目がこちらを見つめる。
ああそれだけで、ドキドキしてしまうだろう。
「なんだべ悟空さ?」
「あのよ。おめぇ、なんか欲しいものねぇか?」
「欲しいもの??」
「おう。」
「ううん…。そんな突然、言われてもな…って突然どうしたんだべ?」
「ん?うん…まぁいいじゃねーか」
「なんだべ?怪しい・・・」
「なんも怪しくなんかねーさ」
「いんや。悟空さのイキナリは何かが起きる前だべ」
「…そっかぁ?」
「んだ!」
「・・・・・・」
「…悟空さ?」
確かに、いつも妻にこんな事は聞かない。
今日がホワイトデーと思い出したからだ。忘れたままだったら今頃ソファで昼飯まで寝ている。
ホントに情けない話、考えてみれば結婚をして妻に何かしてやったことがあるだろうか?
「悟空さ?どうしただよ黙っちまって…おら 何か気に障ることしただか?」
なにもしてない。なにもしてない。
なにもしてないのは自分だ。
自分が真剣な顔をして黙り込んでいるだけで妻はこんなにも心配してくれる。普段、家をあけている回数のほうが多くて、妻へ何かしてやった記憶もないのに…つくづく情けない。
「チチ。」
「ん?」
「今日、ホワイトデーなんだろ?」
「ん?あっ!!そうだべ!!なんだ悟空さ、わかってたんだべか?」
「そんなことより、何かオラにしてほしいことないか。」
「・・・・」
じっと妻の顔を見つめれば、妻は頬をうっすら朱に染めて心なしか瞳が潤んできた。
「・・・チチ?」
「ん?ふふ、いいだよ。」
「?」
「何もいらねぇだよ。」
「チチ。遠慮すんな」
「遠慮なんてしてねぇだ。」
「じゃぁ何か頼んでくれよ。」
「・・・悟空さがおらの側にいてくるだけでいいだ。」
「・・・・・。」
「おら、それだけで他になんもいらねぇ。」
「ホントか?」
「んだ。それに、悟空さがおらを想ってくれてる…これほどの贅沢はねぇだ。」
「チチ…」
必死に笑顔になろうとする妻が、どうしようもなく愛しすぎる。
時がとまっているのではないだろうかと思うくらい、ゆっくり引き寄せて腕に閉じ込めた。
想われているのは、自分のうほうだ。
不安にさせているのは重々承知だった。それでも自分の好きなことに夢中になると忘れてしまう。どうしようもない男だ。
それでも想ってくれる妻に一生、いや死んでも頭があがらないであろう。
側にいてやることが妻の願いなら、それは自分も同じだ。
「…昼飯さ食ったら…一緒にソファでお昼ねしてけろ?」
「ああ。」
あまりに可愛いお願いだから、自然に顔が緩む。
胸に摺り寄せていた頬をあげて笑う妻に一つキス。
はにかんだ、照れる笑顔に一生分の眩暈を感じた。
END
…あれ?
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