失ってから気付いた想い
□失ってから気付いた想い
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「ではこのプロジェクトの・・・・・・・」
いつものように始まった会議。
ぼ〜っとしながらその会議を聞いていた。
父さんをちらっと見ると、なぜか口元に笑みを浮かべている。
いつもと同じプロジェクトの報告会議。本来社長が出る会議ではないにも関わらず、父さんはその会議に出ていた。
そう・・・いつもと違うのはそれだけじゃなかった。
小さなノックが聞こえて、いつものようにコーヒーが運ばれてくる。
いつもと一緒なのはそこまで。
いつもは秘書課の女の誰かがコーヒーを運んでいた。
しかし・・・今日運んできた人物は・・・俺の知っている人物だった。
黒い艶やかな髪をまとめ、スーツを身にまといっているけど・・・あの瞳はまったく変わっていない。
牧野が・・・牧野が俺の目の前にいる・・・
夢じゃないのだろうか・・・
牧野は俺に気付いていないのか、コーヒーを配っている。
俺は耐えられなくて立ち上がり、牧野を抱き締めた。
「牧野・・・・」
この華奢な体が折れてしまうのではないかというぐらい強く抱き締めた。
「牧野・・・会いたかった・・・牧野・・・」
俺は何度も何度も牧野の名前を呼んで抱き締める腕に力を込めた。
「はなざわるい・・・」
牧野が俺の腕の中でぽつりと俺の名前を呼んだ。
牧野だけが呼ぶ・・・俺の名前。
俺は3年半ぶりの牧野を逃さないといわんばかりに強く強く抱き締めた。
「類・・・そろそろ牧野さんを離してあげなさい」
その声がするほうを見ると父さんが肩を震わせて笑っていた。
周りはいきなりのラブシーンに呆然としていた。
「きゃー!!!!!」
牧野はその光景をみて、真っ赤になって慌てて部屋を飛び出していった。
「父さん・・・なんで牧野のこと知ってるの!?それになんで牧野がここにいるの?」
「話は後だ。会議が終わってから話そう。」
父さんは未だに肩を震わせていた。