失ってから気付いた想い

□失ってから気付いた想い
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一歩踏み出そう。


花沢類も頑張っているんだから・・・そう思ってあたしは樹さんのお話を受けることにした。


「ではこれからの予定を立てましょう。会社内で類と会うことはないようにしなければね。」


樹さんはそれは楽しそうに予定を立てていた。


あたしは今までの不動産会社のバイトを辞め、花沢物産社長秘書見習として大学へ通いながら仕事を始めた。


樹さんに誘われてから半年がたった。


あたしは第一秘書の中島さんについて毎日勉強していた。


中島さんは樹さん・・・社長の秘書になってもう5年だと言う。


「社長が私にお願いをしてきたのは初めてでしたよ。それも『彼女を頼む』ってね。」


中島さんは笑いながらその時のことを思い出していた。


「社長ったら・・・そんなことを言ってたんですか?」


「ああ。社長から聞いたけど・・・専務と知り合いなんだって?」


あたしは『専務』という言葉に反応した。


専務とは・・・花沢類。


「高校の先輩だったんです。いつも助けてもらってばっかりで・・・」


「あの専務が?あの人も人間だったんだね〜ってこんなこと社長に聞かれたら怒られるか。」


中島さんははははと乾いた笑いをした。


「どおいう意味ですか?人間だった・・・?」


「専務の笑った顔を一度でも見たことがないんだよ。それにいつも表情を崩さない。一部の間ではロボットじゃないか?なんて冗談もあるぐらいだよ。」


あたしの胸がずきっとした。


樹さんから聞いた花沢類の現状・・・。花沢類はあたしがいなくなったあと、また笑わなくなってしまったらしい。


あたしのせいじゃないと樹さんは言ってくれたけど・・・


花沢類は優しいから・・・あたしがいなくなったことに責任を感じちゃったのかな・・・


つくしは同じ会社にいるはずの類に会いたくてしょうがなかった。


でも・・・どんな顔してあったらいいのかわからず、未だに会いに行けないでいた。
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