失ってから気付いた想い
□失ってから気付いた想い
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本当に・・・そうなのだろうか・・・・
父さんは3年半前からのことをすべて話してくれた。
その話を聞いた俺はようやく父さんが牧野をどう思っているのかわかった。
「類。牧野さんはなかなか優秀だな。このまま大学卒業後も花沢で働いてもらえないか聞いてみないとな。」
父さんはニヤリと俺を見た。
・・・何がいいたいの・・・?
「牧野さんにはこのまま私の秘書をしてもらおうかな。」
「ダメ!俺の秘書にして!!」
俺はつい声を荒げて父さんを睨みつけた。
「くくく・・・類は本当に牧野さんのことになると表情が変わる・・・。」
俺は笑っている父さんを横目にぷいっと横を向いた。
「類。お前が牧野さんをどんなに大切に想っているかわかってる。それに言ったろう?お前が仕事をしてくれるなら私は何も言わない。
それに・・・私も牧野さんが気にいってしまってね。牧野さんが娘になるなら喜んで祝福しようじゃないか。」
「父さん・・・それ本気で言ってるの?俺は・・・牧野を選んでもいいの?」
俺がそう言うと父さんは俺を見て笑いだした。
「今更なにを・・・類の気持ちは4年前から知っている。それにお前を動かせるのは・・・牧野さんだけだろ。」
肩を震わせながら言う父さんを見て俺は目を丸くした。
今まで会話すらまともにしなかった父。
それが・・・ちゃんと見ていてくれたことに驚いた。
それに俺の将来は決まっているとばかり思っていた。
親の敷いたレールのままに跡を継ぎ、見合いをし、数回しか会わない女と結婚し、後継ぎを作る。
それが俺の人生だと思っていた。
でも・・・違うのか?俺は・・・
俺の考えを知ってか父さんはまた話し始めた。
「今の時代、政略結婚なんて愚の骨頂だ。お前には言ってなかったが・・・お前の母、里緒と私は政略結婚ではない。
里緒も牧野さんと同じ・・・一般家庭出身だったんだ。」
えっ・・・
俺は初めて聞く話に驚いた。
母さんが・・・一般家庭出身!?
俺の母さんは俺が3歳の時に亡くなった。
覚えているのは母さんの優しい笑顔。
ふわっとした感じで、とても一般家庭出身だとは思わなかった。
「里緒が死んで・・・私はお前を花沢の立派な後継者にするために厳しく躾をした。それがお前の心を壊してしまうなんて思ってなかった。
今でも悪いと思っている。私は里緒が死んだ時に誓ったんだ・・・類にも愛する人と結ばれてほしいとね。だからお前は本当に愛する人と結婚しなさい。」
父さんは今までで一番優しい顔をして俺に言ってくれた。
俺は両親から愛されていないと思っていた。
両親は政略結婚をして俺を産んだと信じていた。
俺は誰からも愛されない存在なんだと思っていた。
しかし・・・俺は両親から愛され、そして自分も愛する人と結ばれていいのだと知って涙が出そうになった。