失ってから気付いた想い
□失ってから気付いた想い
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「父さん。今まで牧野を守ってくれてありがとう。でも・・・牧野は司のことまだ好きなんだと思う。あんなに想いあってたんだ。
今、俺が牧野に気持ちを伝えても・・・牧野を困らせるだけだよ。」
司が記憶を失って3年半。
牧野は・・・まだ司を想ってるんだろう・・・
「類。牧野さんが司君のことをどう想っているのかは私にもわからない。まぁこれからのことはお前しだいだろう。
私はお前を応援するよ。」
父さんは俺に笑いかけ、肩をポンと叩いた。
「ん。ありがと。・・・とりあえずさ・・・牧野に会わせて!!」
「類・・・そんなに睨むな。」
父さんは呆れたように溜息をついた。
「お前はここで待ってろ。今牧野さんをここに呼ぶから。」
父さんはそう言って内線をかけていた。
コンコンとノックの後にドアが開き・・・入ってきたのはさっきまで俺の腕の中にいた牧野だった。
「牧野さん。頑張りなさい。」
父さんは牧野の肩をぽんぽんと叩いて会議室から出ていった。
俺は入口で俯いたまま顔を上げない牧野に近づいた。
「牧野・・・会いたかった・・・」
俺は耳元で囁き、そっと抱き締めた。
抱き締めた瞬間、牧野の体がびくっと震えたけど俺はそのまま抱き締めた。
ずっと会いたかった。
会いたくてたまらなかった。
しばらくすると牧野が俺の腕の中でぽつりと言葉を発した。
「ごめんなさい」
俺は昔と変わらない牧野の言葉に笑いだしてしまった。
「っほんとに・・・あんたはそればっか・・・・くくく・・・」
「もう!!久しぶりだっていうのに!!花沢類の馬鹿!!」
牧野の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「ごめん・・・。おかえり。牧野。」
俺はもう一度牧野を抱き締めた。
牧野は堰を切ったように泣きはじめた。
「ごめんなさい・・・っく・・・ごめんなさい・・・」
牧野は泣きながらずっと謝っていた。
「牧野。俺も総二朗達も誰も牧野を怒っちゃいないよ。ただ心配してただけ。みんな牧野が見つかったって言ったら喜ぶよ?」
「ほんとうに・・・怒ってない?みんなのところへ・・・帰ってもいいの?」
真っ赤な目で心配そうに見つめてくる。
そんな彼女が愛しくてたまらない。
「当たり前でしょ。あんたがいなくなって俺達は何かが欠けたみたいだった。戻っておいで。みんな待ってるから。」
「・・・帰りたい。みんなに会いたい!!」
牧野は俺の胸に顔を押し付けた。