失ってから気付いた想い

□失ってから気付いた想い
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あたしはあの日、アパートに帰るなり荷物をまとめた。



そして出稼ぎに行った両親のもとへ。



あたしは逃げだしたのだ。道明寺からも、F3からも。



あの人達を見てるとどうしても道明寺のことを思い出してしまうから。



両親の所へ行くと、両親は驚いたような顔をしていたが、何も聞かずに受け入れてくれた。



道明寺の事はニュースで知っていたみたいで。



あんなに『玉の輿』と言っていた両親が何も聞かずにいてくれたことが嬉しかった。



あたしは英徳に退学届を出して、ここから一番近い都立に編入した。



高校3年の半ばに転入してきたあたしをクラスメイトは優しく接してくれた。



家計が苦しいのであたしはすぐにバイトを探した。



担任の先生がいいバイトがあると紹介してくれたのが・・・不動産会社の事務。



こじんまりとした所で、時給もよく、あたしは二つ返事でそこのバイトを始めた。



そこの社長はとてもいい人で、あたしにとても優しくしてくれた。



あたしはバイトをしながら勉強に明け暮れた。



少しでも道明寺のことを忘れるために・・・、あたしは英徳にいた頃より必死になって勉強した。



おかげで成績は右肩あがり。学年トップまで上がることができた。



そしてあたしは就職先を探していたら、先生に大学進学を勧められた。



学費のこともあるので断ったのだが、先生は特待生制度のある大学を教えてくれた。



たしかにまだ勉強はしたかった。あたしは悩みぬき、その大学へ進学することを決めた。



『・・・みんな元気かな。あたし・・・高校卒業したよ。』



つくしは空を見上げた。



つくしも類と同様、空を見上げることが癖になっていたのだ。



『花沢類は・・・今日も非常階段でお昼寝かな・・・』



つくしは類のことをふと思い出した。



いつもそばで支えてくれた大切な人。



なにかあったとき背中を押して勇気づけてくれた人。



無表情だけど、人一倍優しく、繊細な心の持ち主。



つくしはいつの間にか司より類のことばかり考えていた。



司に忘れられたつらかった。



心が押しつぶされてしまうんじゃないかというぐらいに。



でも・・・そばで支えてくれた、類の存在があったからつくしは救われたのだった。



『花沢類・・・あなたは今も笑っててくれていますか?』



つくしは類の天使のような笑顔を思い出して心が温かくなるのを感じた。
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