Novel-長編

□失いしもの8
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私は牧野さんの病室をでた後花沢が所有するマンションへむかった。


類がそこへ滞在しているのは管理人から連絡があって知っていた。


「久しぶりだね。」


私は管理人室に顔をだした。


すると管理人の前田が顔を真っ青にしていた。


「だ・・・旦那さま・・・。」


私は前田の様子がおかしいことに気づいた。



「どうかしたのか?」


「類様が・・・」


類?類になにかあったのか?


私は急いで類のいる部屋にいった。


そこには類の幼馴染である、総二郎君とあきら君がいた。



「おじさん・・・」


「類は・・・?」


ふとベットを見ると類が眠っていた。


「・・・極度のストレスによる貧血を起こしたみたいで・・・」


あきら君が私に説明してくれた。


「極度のストレス・・・類になにかあったのかい・・・?」


すると総二郎君もあきら君も困惑の表情をしていた。


・・・牧野さんのことなのか・・・


「牧野さんが行方不明になったことが原因かい?」


私が牧野さんの名前を出すと二人は表情を変えた。


「おじさん・・・なぜそのことを?それに・・・なんで牧野の名前を・・・」


「牧野さんのことは前から聞いていたんだ。類を・・・類の笑顔を取り戻してくれた女性だということを。」


すると二人は少し表情を和らげた。


私はこの二人を幼少のころから知っていた。


しかし二人のこんな表情は初めてみた。


これも・・・牧野さんのおかげなのかな・・・



「牧野さんは無事にいるよ。」


私がそういうと二人は私に詰め寄った。


「おじさん!牧野は・・・本当に無事なんですか!?」


「牧野は・・・今どこに!?」



彼らも心配していたんだろう。


でも・・・


「本当に彼女は無事だ。・・・しかし・・・今、君たちに会うことはできない。」


その瞬間二人の表情が凍りついた。


「なぜ・・・ですか・・・?」


「その理由も言えない。ただ・・・今は会えないんだ。」



「父さん・・・どうゆうこと・・・」



「「類!!」」



私が振り返ると類は上半身を起こすようにした。



「父さん・・・今の話って・・・牧野のことだよね。牧野に・・・牧野になにかしたの?」


冷たい目で私を睨む。


それほど牧野さんが大事なんだな。


「類・・・よく聞きなさい。牧野さんに今は会えない。でも・・・時期になったらまた会える。」


「どうゆうこと・・・?牧野はなんて言ってるの?」


なんて言っているか・・・か。


牧野さんは記憶がない。


何も言えるはずがない。


「今のお前を見たら牧野さんは悲しむな・・・。」


私はぽつりと言った。


「何・・・?」


「そんなふうにしているお前を見たら牧野さんはお前のことどう思うだろうな。牧野さんはそんなお前を好きになると思うか?」


私はわざと辛く言った。


「・・・牧野はもともと俺のことは・・・」


類・・・牧野さんは私に類を重ねて涙を流したんだぞ。


なんとも想っていない人間に涙を流すのか?


「私は牧野さんのことを反対したりなどしない。でも・・・今のお前じゃ牧野さんは守れないだろう。」


類は驚いた顔をして私をみた。


「牧野さんは一般の家庭の方なんだろう?私はそんなこと気にしないが、いろいろ言ってくるものもいる。そんなやつから牧野さんを守ることは・・・今のお前では無理だな。」


「・・・牧野が俺を選んでくれるなら、俺は何があっても牧野を守る。」


類は私を睨むように見た。


「半年。」


私は類に言った。


「半年?」


「半年お前に時間をやろう。半年でお前がどこまでできるか見せてみろ。実績をつめば他のやつも何も言わなくなる。お前の覚悟を見せてみろ。」


類・・・お前が知っている牧野さんは・・・今いないんだ。


「・・・父さんは牧野が今どうしてるのか知ってるんでしょ?」


「ああ・・・。」


「牧野は本当に大丈夫なの?」


「それは保障する。類が実績をあげたら・・・彼女に会わせよう。」


すると類の目に光が戻った。


類を動かせるのは・・・牧野さんだけなんだな。


「わかった・・・。俺やるよ。」


類・・・お前は半年後・・・耐えられるのか?



牧野さんがお前のことを覚えていなくても・・・
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