Novel-短編
□名前
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牧野と付き合うようになって半年―――
俺は毎日が幸せだった。
俺の隣にはいつも牧野がいる。
こんなにも幸せなことがあっていいのかな。
ずっとこんな日が来るのを心のどこかで待っていたんだと思う。
そんなある日俺はカフェで牧野がくるのを待っていた。
すると
「類は変わったよな〜。まぁそれも牧野のおかげだろうな」
ニヤニヤと笑ってくる幼馴染で親友の総二郎・・・
「総二郎うるさい。」
「お〜怖い怖い。お前それが親友に対する態度かよっ!」
俺は総二郎を無視してそのままソファでうたたねをした。
無理!絶対無理!
そんなこと言うなよな〜。頼む!この通り!
俺は牧野の声がしたと思って目を覚ました。
すると牧野が真っ赤な顔をして総二郎とあきらと話していた。
俺はイライラした。
何であいつらと話してんの?
牧野と付き合い始めてから俺は嫉妬深くなったと言われた。
昔から興味のないことにはホントに無関心だったけど、牧野のことはなんでも知りたかった。
付き合って半年―
そろそろ俺達の関係を少し前進したいと思ってる。
手を繋ぐのも恥ずかしがっていた牧野だったけど、毎日バイトの帰りに手を繋いで帰ってたから今では当たり前のようになっていた。
キスも何回もした。最近は俺がキスすると必死に応えてくれる。控え目だけど・・・
本当はすぐにでも牧野を抱きたかった。
でも牧野は純情だからそんなこと言って逃げられたら困るから必死に理性で抑えていた。
でも・・・付き合って半年。
そろそろいいんじゃないかな?
そんなことを考えていると3人はまだこそこそと話していた。
俺はたまらなくなって牧野を後ろから抱き締めた。
「こいつらとばっか話しちゃダメ。」
「はっ・・・花沢類!!」
牧野は急に抱きしめられて驚いたのか真っ赤だった顔をさらに赤くした。
なんか面白くない・・・
「類。お前そんな不機嫌オーラ全開の目で俺らをみるなよ・・・」
あきらが呆れたように言う。
「あきら達が牧野とこそこそ話してるからでしょ!」
俺の前以外でこんな可愛い顔見せないでよ・・・
「花沢類?ちょっと・・・離してほしいんだけど・・・」
牧野が俺の腕の中でじたばた暴れ始めた。
「・・・さっきあきら達と何話してたか言ったら離してあげる。」
俺はにっこりと笑って牧野をみた。(牧野にしか笑わないけど)
「えっ・・・それは・・・えっと・・・」
なぜかもごもごと口ごもる牧野。
それをニヤニヤと見る総二郎とあきら。
「おいおい牧野。お前言っちゃえよ。」
「そうだぞ!」
聞かれたくない話というわけじゃない・・・じゃあなんだ?
俺は気になって牧野の耳元でもう一度囁いた。
「牧野・・・教えて・・・」
これで少し悲しげな顔をすれば牧野は絶対言ってくれる。
俺はくすっと笑った。
しかし次の瞬間俺は耳を疑った。
「類・・・・大好き!」
耳元で牧野は真っ赤になりながら言った。
えっ・・・・?
今・・・・大好きって言ってくれたよね・・・。
その前に・・・
『類』
俺は一気に顔が赤くなるのを感じた。
前から『類』って呼んでいいって言ってんのに一度も呼んでくれたことはなかった牧野。
その牧野が『類』って呼んでくれた上にめったに言わない『大好き』とまで言ってくれた。
俺はいまだに信じられないとゆう顔で牧野を見つめた。
すると
「お〜!!類のそんな顔初めてみた!」
「やっぱり俺の言ったとおりだったろ?牧野!」
言ったとおり・・・?
俺は牧野を見つめた。
「あの・・・ね、西門さんが花沢類のこと『類』って呼んでみろって。いつもじゃ見られない顔するかもしれないからって・・・」
・・・じゃあ俺は総二郎達に遊ばれたのか・・・?
「へ〜。牧野はそのためだけしか呼んでくれないんだ。」
俺はシュンとした顔で牧野を見た。
すると牧野はあわてて俺のとこに寄ってきて
「そんなことないよ!・・・類って呼びたかったけど・・・恥ずかしくって・・・。それに・・・その・・・あたし達の関係も・・・ちょっとは進めたらいいなぁって・・・」
牧野は最後の方はホントに小さな声で呟くように言った。
でもそれって・・・・牧野も・・・・?
俺は総二郎達に聞こえないように牧野の耳元でささやく。
「牧野・・・・?それって・・・シテもいいの・・・・?」
その瞬間牧野は顔をりんごみたいに真っ赤にさせた。
しかしゆっくりと頷いた。
「ホントに・・・?無理してない・・・?」
「む・・・無理してないよ・・・。あたしは・・・類が好きだから・・・類となら・・・そうなりたい・・・」
俺はその言葉を聞いて牧野を抱き抱え立ち上がった。
「ちょっ!!花沢類!!」
「類!」
「へっ?」
「類って呼んでくれるんでしょ?」
「うっ・・・ごめんね類。・・・・っておろしてよ〜!!」
「ダメ!俺もう我慢できないよ。うちいこ。」
牧野はさらに真っ赤になって大人しくなった。
「類!牧野!どこいくんだよ!!」
総二郎がなんか叫んでたけど俺は無視して車にのりこんだ。
その日―――
牧野は俺の腕の中で何度も『類』って呼んでくれた。
好きな人に名前で呼んでもらえるってこんなに幸せなことだったんだ。
まだ眠っている牧野の髪をなでながら俺は思った。
牧野が起きたら言ってみよう・・・
『おはよう。つくし』って―――
愛しい人の名を―――