過去拍手文
□3月/卒業
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* 逹瑯 ver *
校内は卒業式色に染まって、式を終えた先輩達があちこちで涙したり騒いだりする中、あたしはただ一人"岩上逹瑯先輩"を探していた。
…今日で最後なんだからちょっとくらい話がしたいのに。
探しても探しても見当たらない苛々気分のまま、あたしは何となく屋上へと向かう。
『…わっ!!』
扉を開けようと手をかけた瞬間、あたしが開けるより先に勢いよく風が舞い込んできた。
目の前には…彼が。
『逹ろ…?!』
「お前…来んの遅ぇし!!」
『は?!』
「"は?!"じゃねぇよ、俺ずっとここで待ってたっつーの」
…待ち合わせした覚えなんてないんですけど…?
寧ろこっちが探してたよ。
『約束してたっけ…?』
「あ?してねぇと来ねぇのかよ。つーかこんな日に人来なくてゆっくり出来んのなんてここしかねぇべ。気付けよ、馬鹿」
『………』
あたしの恋人はひどくモテるけどものすごく俺様。
いつもなら頭に来て言い返すような言葉なのに、ちょっと寂しそうにしたその顔を見て何も言い返せなくなってしまう。
逹瑯は卒業したらここ…地元を離れなきゃならないんだって。
屋上のフェンス越しに町の景色を眺めながら隣に逹瑯が居る日常をしっかりと刻み込んで
何も言わないその姿に震える声で告げた。
『すぐ、追いかけるから』
「………」
『だから、…待っ……』
…あーあ。
泣かないって決めてたのに。
不安なのは一緒
笑顔で"いってらっしゃい"を言う予定だった。
『ごめ…』
抱きしめてくれた腕から痛いほどの辛さが伝わる。
その温もりにまた涙が溢れた。
「…待ってるから、絶対来いよ」
何度も頷くあたしの頬に春の風が優しく触れる。
もう少しだけ、待ってて。