Main
□愛しい香り
1ページ/2ページ
朝。
窓から柔らかい光が差し込み、瞼ごしにも明るくなりだした頃。
オレはうっすらと目を開く。
だが、何時もとは違う。
その原因は、隣に恋しくて堪らない人の姿が無いから。
「おいてけぼりかよぉ…」
目覚めに居る筈の人がいないと無性に寂しいのだ。
それは同時に8年間の"無"をも思い出させる。
だからこそ、一緒にいて欲しいのに。
心の中で文句と願いを吐き出しつつ枕に顔を埋める。
そのまま鼻から息を吸えば必然的に感じるのは匂いで。
−−ザンザスの匂い−−
本人がいない今、感じられるものはそれぐらい。
だから、息を思い切り吸い込み、残り香を出来るだけ多く感じる。
「…寝るかなぁ…」
寂しい何て言っていてもどうにもならない。
だから、そっと目を閉じた。