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□温もりは望め無くて嘲笑だけが心に残る
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オレが引き取られた日は、余りすっきりしない日だった気がする。
曇天。後(のち)のオレの行く先を表しているようだ。







温もりは望め無くて嘲笑だけがに残る







運命の、その日。
相変わらずご飯はパンと少量のスープだと思いながら、家に帰る。
すると、何時も大人しいというか、変というか、よく言うならば落ち着いている母親が飛び付いて来た。
そしてオレを抱きしめ、耳元で甘く囁く。

「お前はXANXUS、XANXUSよ。
ここらを支配するマフィアの頂点、ボンゴレの子なの!
いい、あの炎を今から会うお爺さん…、九代目に見せるの。
いいわね、XANXUS?」

今まで、名前何て無かった。
否、要らなかった。
明日、明後日生きていけるかいけないか。
命が掛かった毎日の生活。
心から安らぐ時何て無い。
お腹は空いてるし、着る服だってろくに無い。
そこら中で醜い男と女が、気色悪い声を上げて、生きていくために身体を売っている。
幾らオレが小さくたって分かる。
母親が同じ事をして、金を手に入れているだろうと。
気持ちの悪い喘ぎ声、罵声、嘲笑…
此処には醜い物が満ち溢れている。

「…下ら無い」

見たく無い、聞きたく無い。
目を閉じる、耳を塞ぐ。早くせめて気休めでも醜い世界を断つ、家に戻りたい。
そんな生活。
名前を呼ばれる必要は無いし、欲しいとも思っていなかった。

………筈なのに。
母親にいざ付けられたばかりの自分の名を呼ばれると、気恥ずかしくて嬉しくて、言い表せ無い気持ちが込み上げて来る。

「…うん、炎…、見せればいいんだよな?」

つい、褒められたくて、少しでも自分を見て欲しくて、言う事を聞く。

「そうよ、そう…。
XANXUSは頭がいいわ。
大丈夫、あなたはボンゴレ九代目の御曹司だもの」

…あぁ、そうか。
もう手遅れ何だ。
母親は、自分を見ていない。
その目は、自分より遥か先。
裕福な自分を想像して、それしか欲していなかった。
オレじゃ無くても、いいんだ。
きっと、子供がいなければ一緒に暮らしたいという、裕福な男がくれば、すぐさまオレを捨てるだろう。
そうだ、そんな親だった。

−−−一筋の、涙が零れ、頬を伝って流れ落ちた。

もう、ダメ何だ。

確かに、“絶望”を実感した。
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