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□湿潤
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どうして泣いてばかりいるの、と
心の中に滲入してくる君を
どうしたら傷付けずに愛せるか
心の中心はいつも、晴れることを知らずにいた
それは永い永い記憶。
あれだけ懇願し続けて、やっと触れた筈だった。
白くて 柔らかくて
驚くほどに温かい
君という名前の幸せに やっと触れた筈だった。
言葉に、音に、ならない気持ちが
しん と静まり返った野に咲いてゆく
世界はこんなにも美しく貴女を囲んで華やいでいたのかと
恥ずかしげもなく嗚咽した夕暮を
“僕”が、
忘れてしまわないで生きられたなら
愛情なんていう実体の無い刃物に切り取られることなく
あの綺麗な瞳だけは息衝かせて
神様。
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