隠の王

□空色破片
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こんにちは!
なんと、このサイトが4000打をむかえました!
そこで宵壬フリー文を書いてみました!
電水に出来る精一杯の甘を書いたつもりです……!
少し血の表現があります。
設定は…細かく気にしないでください…同居です←
お持ち帰りしてくださる際は報告は任意ですが当サイト名を記載してください。配布終了しました。

今テストなんであれですが、次はもっと盛大にやりたいと思います。
それでは、皆様本当にありがとうございました!


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パリン……と乾いた音がした。

何かが割れたような音。

引っ付いてしまったかのように開かない瞼を、眉間に皺が寄るのを感じながら引き離すようにして開けた。

眠りの中からいきなりに呼び出された現実。ぼぉっと霞のかかったような思考の中、だるく重たい体を起こす。
壬晴がかけてくれていたのだろう毛布がずれ落ちて、僕はそれを拾い上げ、先程まで自身が横たわっていたソファーに軽く畳んで投げる。
「何か、音がしたけど」
何かあった?と尋ねる前に、壬晴からまずおはようの挨拶が飛んできた。
僕もそれに答え、壬晴の居るであろうキッチンに急ぐ。

「思ったより高くて」
恐らく食器棚に手が届かなかったのだろう。
床にあちこち散乱した破片は、それが高い場所から落ちてきたことを物語っていた。
その破片は透き通ったあお色をしていて、描かれていたはずの細かな模様は今目にしたくとももう出来ない状態であった。

僕と、壬晴と、初めてお揃いで買ったものだった。

「怪我は?」
だけど僕はそんな事よりも、ぺたんと座り込んでしまった壬晴が気になって
脱力してしまった様子の壬晴の腕を引いて無理矢理に立たせる。

「ごめん、宵風、俺……
宵風が起きてくる前に朝ご飯作らなきゃ、って思って、それで……」
段々と声は小さくなり、ついには口を噤んでしまった壬晴。
硝子片がついてやしないかと壬晴の服をはたいていると、パラ、と小さな欠片が一瞬、キラリとあおい光を見せて落ちていった。
その光を追うようにして視線を落とすと、壬晴の指先に伝う赤いものが目に映った。

「レモネードを入れようって思ったんだ…」
折角お揃いのグラスだったのに、と俯いてしまった壬晴。

「血、出てる」
誰かに想ってもらうこと。
何かをしてもらうということ。
それがどんなに温かくて甘く胸を締め付けるものか。
凄く愛しくて潰れてしまいそうなくらいきつく抱きしめたくなる。

すぐそこにタオルはかけてあったし、だけど気がつけば僕は壬晴の指先に口付けていた。
流れてくる赤いそれに逆らうようにして舐めとっていく。

「宵、風っ、美味しくないよ
血なんて」

頬を染めて、僅かな声の違いから感じ取れる壬晴の動揺。
僕は何故だかそれに愉しさを覚えて、じっと壬晴と目を合わせたまま笑ってみせた。
自分の笑った顔を見たことがないから、上手く笑えていたかは分からなかったけれど、壬晴がはにかんだように笑い返してくれるのに少しホッとした。

「また、新しいグラス買いに行こう」

壊れてしまっても、作り替える事の出来るもの。
それまで込められた思い出も、壊れてしまった替わりという事も含めて、新しいそれはきっと僕らに新たな思いを運んでくる。













空色破片


4000HIT感謝フリー
080703


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