隠の王

□誤魔化しはきかない言い訳ならどうぞ
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「雷光さん」

「……」

「雷光さん……
今日来るなんて言ってましたか」

呼びかけても答えない、
俺の部屋に居座ってごろごろ寝転がりながら、何かよく分らない分厚い本を広げている。

「言ったんじゃないかな」

「今日は表の仕事だって……」
そう言ってた筈なのに。
だから今日は午後から宵風と会う約束をしてある。
雷光さんは来ないと思ってたから。

「午後からだよ」
そう言う雷光さんに俺は覚られないように胸をなでおろす。

「急に来てはまずい事でもあったのかい」
依然目は活字を追いながら、雷光さんに尋ねられる。

「そんなことはない、です」
よく考えれば、宵風に会うからって負い目を感じる必要なんてない。

「私に隠していることはない?」

今度は雷光さんの目は俺をじっと捉えていた。
心の中まで見透かされそうで、俺は目を逸らして一息ついてから取り繕った。

「今日予定がないって嘘だっただけです」

「誰かと会うのかい」
だとしたら宵風かな、と、微笑む雷光さんは少しも笑ってる感じがしなかった。





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