【胎動編】最後の時間
□【Ep17】檻から出た子猫
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成り行きで始まった共同生活はそんなに悪いものではなかった
身動きが出来ない二人に出来ることは数少なく
それでも最初こそ互いの存在への警戒を維持して沈黙を守っていたが、やがて
ポツリポツリと目を合わすことなく、戦闘を匂わせる険悪な空気を時に漂わせながらも言葉を交わすようになっていった
「脱走者が出たら普通はすぐ俺に情報が回ってくる
見つけ次第、殺せ
代わりに次回の取引に“色”をつけてやるってな。それなのにお前について政府は何も言ってこなかった
今までそんな例外はねぇのに
無力ならまだしも、お前はそこそこ戦える
答えろ
----------お前、----何者だ?」
「………………お前に処分させるまでもない、ちっぽけな存在」
卑屈な言葉だった為か、カルマの眉間に皺が出来た
黒の異色というレアリティがあるのに処分などあり得るのか、と疑惑に満ちた目で言葉なく此方を問い詰める
当然、イルはその視線に気づかないフリをした
カルマ自身、どうしても知りたい内容ではなかったようですぐにいつもの尊大な態度に戻った