【胎動編】最後の時間

□【間幕劇】見えない姿
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久しぶりの外出に心弾ませて出かけたものの、速攻で白衣を脱いでから外に出るべきだったと当たり前なことに気付く。


自分の風貌はとってもとっても平凡で、他人に埋没されていく無個性だ。

だが白衣を着ていることによって自分は何処の部署所属かーということがだだ漏れ。


そして仕事中毒な上司が就任以降、我が部署の嫌われ度合いは半端ない。




逸れ違った軍部の人間にはガン飛ばされ、その度にビクビクし、ペコペコと頭を下げてやり過ごした。

司書もぶっきらぼうなもので、本の位置を尋ねたら自分で探せと突っぱねられ、取りつく島なく無視された。










その後、クヨクヨと本棚の谷間で落ち込んで蹲っていたら、何処かの部署から資料返却を押しつけられたらしい別部署の友人に出会った。


気さくな友人はさらりと補佐官の外出理由を聞き出すと、数少ない児童書が置かれたスペースまで連れて行ってくれた。


政府内は人口制限がされている関係で子供が少なく、この類いの本はとても少ないのだという。それこそジャンル別、図書館案内にすら載っていない程に!!

(友人が居なかったら確実にアウトだった)




その中から友人が勧めてくれた数冊を借りて、持ってきたのが本の上にある絵本の山。


そして今現在、補佐官が格闘し、机の上に散らけているのは布の山。そして裁縫道具。
ついでに(やはり友人が勧めてくれた)裁縫の指導書

(【初めてのお裁縫】という如何にもな名前で表紙はファンシーなイラストだ)





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