【胎動編】最後の時間

□【Ep17】檻から出た子猫
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「…私を追ってきた政府の上官

アイツ、このスラムに異色はお前しか居ないって話してたが、あれって何だ?」




記憶の片隅に留まり続けていた疑問を此方からぶつけたこともある





「政府はキズナとキリエの二人がこのスラムに居ることを知らねーからな


あの二人が来る数年前まで、確かに俺はこのスラムで唯一の異色だったからそう思い込んでいるんだろ。だからってわざわざ教えてやるつもりもない」





「……隠す必要もないじゃないか」





「------------あの二人は政府に渡さない

色々と、返さなきゃならねーものがあるからな」







通常の比ではない低い呟き


自分に向けられた訳ではないのに、ぞくりと肌が粟立つ






砂礫の二人と敵対するカルマとの間に何か因縁や確執があってもおかしくはない



だが、そこに戦闘狂のぎらついた愉悦は一切なく溶岩のように滾る憎悪で縁取られた殺意が見えた





昔、何があったのだろうと気になったけれどカルマが自分の素姓を追求しなかったのだ


聞くことは憚られた





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