【胎動編】最後の時間
□【Ep18】そして終わる物語
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「!」
意図せず体がビクつき、視界から闇が一掃される。目を開ければ今にも酸の雨を滴らせそうな紅の空
仰向けに気絶していた体勢から慌てて起き上がれば視界に誰かの後ろ姿が映り込む。
白灰色
気絶の余韻でぼやけ視界だったがそれだけでその背中が誰のものだか解った
無骨で粗暴でその癖実は甘いものが好きらしい戦闘狂、ヘルハウンドの頭領・カルマ
「カル……」
だが同時にその色彩が引き金となって気絶する間際の記憶が蘇った
無慈悲に振り下ろされた刃。この先に待つ殺人への恍惚から歪んだ笑み
緊張が体を駆け抜け、指先までピンと張りつめる。だがカルマが此方を見る気配は微塵もなかった。
訝しく思い、何度か瞬きをする。少しずつクリアになっていく視界でようやくある異変に気付いた
「……………え?」
予想どころか想像したことすらなかった光景に頭の中が真っ白になる。
イルの目の前には間違いなくカルマが立っている。
屠ったばかりの血が零れる剣を握って
それならば、アレは…………何?
イルたちから数メートル先の距離で絶叫しているあの“カルマ”は何……?