【胎動編】最後の時間
□【Ep15】足りない言葉
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真っ白な光に目を射抜かれ、瞼をきつく閉じた
それでも尚、隙間から侵入してくるような錯覚を覚える程の強い光に顔を背ける
身じろきすると、石鹸と消毒の匂いがする柔らかな布の肌触り
鎮静剤を打たれた後によくある、ぼんやりとした意識
重い瞼をあげる
脇から相変わらず鋭い光が自分を照らしているが、さっきのように目を開けていられなくなる程ではなかった
視界には薬瓶やその他医療キットが収められたキャビネットが映る
どうやら医務室らしい
医務室という単語でイルは一つ嘆息した
医務室に転がされているということは自分はまた…………
イルにとって医務室は傷を癒す為の空間ではない
屈辱と羞恥に耐える拷問部屋だ
実験で、訓練で、動けなくなったイルをこの部屋に連れ込んでは飽きるまで嬲り続ける
アルコール臭のする部屋の空気を吸いながらイルは瞬きを繰り返した
鎮静剤などの影響か、酷く頭が痛くて重い
まるで何かで強く殴られたようだ
凌辱に暴力が加わることは珍しくないので、ただ理解と納得と理不尽を受け入れた
だが何かが引っ掛かった