リクエスト

□mnemosyne
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 つばさのリクエスト「ロイアイのからんだアルエド」だったけど、ごめん。先に謝ります!今度がんばるから・・・!


mnemosyne
 相変わらずの憎まれ口を叩く、この金髪の少年は、ポケットに国家錬金術師の証である銀時計をしのばせている。コレを提示するときは、「大人」の顔をする。だが、今は目を三角につりあげて、わたしを見上げていた。
「って、聞いてんのかよ!」
「聞いてるさ。わたしには、記憶の女神がいる。犬のようにキャンキャンほえても、頭に記憶は残る」
 そう、記憶には何度も繰り返す悪夢も含まれる。イシュバールの残虐。一生忘れられない、記憶だ。
「けっ」
 金髪の少年・・・エドワード・エルリック。若干十二歳で国家資格を得た少年。今は、十五歳。そのよこには、鎧姿の弟が兄の行動にハラハラしながら見ていた。
「もう、兄さん・・・」
 たしなめるように弟が言うと、エドワードはほらよ、と紙の束をよこす。
「報告書。といっても何にも収穫ないけどな」
 エドワードがそういうと、すぐに踵を返す。
「まちたまえ、鋼の」
「ああ?」
「次の情報を与えよう」
 その言葉で、少年の目つきが変わる。それは、一瞬のことなのだが、焔が瞳に灯る。そして、すぐに少年の顔つきにもどるのだ。
「何!次はどこだよ!」
 目を輝かせるエドワードに、苦笑をもらす。
「次は・・・」
 情報を伝えるなり、エドワードは走り出しそうな勢いで、
「アルいくぞ!」
 と声をかける。弟は大きな鎧で、ペコリと頭を下げて
「まってよ、兄さん!」
 あわてて走っていくのだった。
「ヤレヤレ・・・」
「あら、エドワードくんたちはもう帰ったのですか?」
「ああ。今な」
 入れ違いに、リザ・ホークアイが入室した。
「今、お茶を淹れたんですが・・・」
 みると、リザが持っているトレイには二つぶんのコーヒーとケーキがのっていた。
「ケーキはどうしたんだ?」
「ああ。これは、ハボック少尉が、ケーキ屋によったからといって、くれたんです。ちょうど、誕生日、ですよね」
 リザはめったに見せない笑顔を浮かべる。
「ああ。そうか。この年になると、嬉しくもないがな」
「そうでしょうか。この日まで生きられたことに感謝すべきです。私は、感謝、しています」
 わたしは自然に笑みを浮かべ、ソファに座るように促した。
「二つあるんだ。君もどうかね?」
「職務中ですが、特別に」
 二人は向き合って、談笑ている。だが、ふと思う。
「鋼はもう、十六になるのか」
「ええ。そうですね。十二で国家錬金術師になってはや、四年がたとうとしています」
「今でも思うよ」
「はい?」
「あれは、傲慢だったのかもしれないと」
 リザの視線を感じて、ふと笑う。
「正直、あの才能は羨ましいとさえ思う。嫉妬・・・という感情があうのかもしれない。そして、わたしの傲慢で彼は軍の狗となった」
 人体錬成という罪を、才能があるからこそ背負うことになってしまった子供。
 救うというより、利用できると少なからず思っていたのだろう。
 彼らが人体錬成という罪を背負うなら、
 私は、彼らを軍属にしたという罪を背負うのだろう。
「でも、それが彼らの救いとなったのは事実、だと思います。エドワードくんは貴方を少なからず、慕っているとも見えます」
「慕っている?はは。そんな記憶はない・・」
「記憶ではないですよ。貴方が子どもを思う、慈しむ目を私は感じます。それは優しさでしょう」
「ふ、ずいぶん買い被りすぎだな」
「いいえ。そんな貴方を、私は慕っているのですから」
 リザは優しい笑みを浮かべた。
「ありがとう」
 優しくておだやかな、色で言うなら淡い桃色をした空気が流れる。そんな心地よさを感じられるのは、執務室でありながら、彼女が笑うからだ。
 だが、一秒後。
「大佐〜!聞いてくださいよ〜」
 ハボック!男の咥え煙草は乳離れができてない証拠だ!と叫びそうだったが、おもわずぐっと堪えた。その顔だ。
 でれでれしてしまりがない顔。どうやら、恋人が出来たのか?
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