リクエスト
□ヤキモチの結果
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東方司令部は、今日ものどかだ。いや、今日は、と言ったほうが適切だろう。
サーチ・マーカー少佐は、大部屋にてくるくると椅子を動かして、子供っぽい行動をしつつ、上の空でいる司令官をちらり、と見た。
「准将。書類、溜まってきてますよ」
「…やってるよ」
「どこがです。中佐の休暇が終わったら、即叩かれますよ」
「だって、やる気しねぇ〜」
「やる気がしないのは、今に始まったことじゃないでしょう」
「そうだな」
そこを認めるんですか、とあきれた溜息をついた。
「アルは今日明日休みなんだろ?しかも、オレは夜勤。よゆー余裕」
その余裕は一体どこからくるんだろう、とマーカーは思う。
「なあ、今日の夜勤ってマーカー?ガネット?ソニック准将?」
「俺です」
「じゃあ、口止め料がかさむな」
「一体何を口止めさせるつもりです?」
「サボってたってこと」
「高いですよ」
「値段がつくものなら、お安いよ」
最近、この人のペースに呑まれすぎてるな、とマーカーは思う。
「そういえば、エイジ昨日から見ないな」
「ああ、なんか三日連休だそうですよ。エネル大尉が遊び相手がいない、って…」
「そうか〜」
実のない会話が続いて、マーカーも呆れ顔だった。
「さて、仕方ない、書類をやるとするか」
早くしてくださいよ、と心でつぶやいた。
☆
「おじゃまします」
「いらっしゃい」
一方、エルリック邸では、たくさん作りすぎたというスープを手に、エイジが訪れていた。そのついでに、貸してほしい本があるという。昼過ぎのことだ。
「丁度、二日かけて書籍の整頓と掃除をしたかったとこなんだ。兄さんがいると、手にとる本を片っ端から読み始めちゃうから、全然掃除にならなくて」
「あ、僕もよくやります。つい、読んでしまうんですよね」
エイジも苦笑していた。
「よかったら、僕、手伝いましょうか?本、探しがてら」
「ホント!?助かる!兄さんの書籍なんて、ごちゃごちゃで一日でも足りるかな、と思ってたところなんだ」
ふたりが二階のエドワードの部屋に向かうと、エイジの部屋をみた感想はこうだ。
「思っていたより整頓されてるんですね。…本以外は」
アルフォンスは苦笑して、
「最近は寝るだけだからね」
「研究してないんですか?」
「あのひとの研究意欲って、突然湧くみたいなんだよね。ほんっとに唐突。だから、しないときは、ぱたり、としないね。してたら、この部屋寝ることさえできないよ」
何故かエイジも、ああ、なるほど。と妙に納得していた。
「さて」
アルフォンスが、床から天井まである書架を眺めた。通常、本といえばたてに置くものだろう。だが、その書架は、縦と横と、あるいはちょっとした隙間にも押し込まれていて、出すのも一苦労だ。
「分類にわけるんですか?」
「うん、一応。最近、医療系にも興味があるのか、ちょっと医療系も増えてきてるからね」
「そうですねぇ。でも、ちょっと医療にしては偏ってますね」
「趣味だそうだよ」
はは、とエイジは苦笑を零した。
アルフォンスが書架の本を取り出して、床においていくのを、エイジが分類しつつ、ほこりを掃うという感じで進む。
「でも、ホントに多いですね。この本棚にどれだけ収納できるんですか」
「詰め込みすぎだよね。でも、ずっとまえに少佐が勉強しに来てた時、使ってた部屋あったでしょう?」